小説での商業デビューに際して「しておけばよかった」と痛感した3つのこと

物書きばなし

いつも記事を読んでくださりありがとうございます。この度の2026年3月、『剣客逓信 明治剣戟郵便録』という時代小説でアルファポリス文庫よりデビューが叶いました。本作は2023年7月にアルファポリス主催の第9回歴史・時代小説大賞において「痛快!エンタメ剣客賞」を受賞したものです。

商業作品としてのデビューは長年の夢の一つでしたが、これに際して「しておけばよかった」と強く思うことがありました。
自身の振り返りとして、3つのポイントをまとめてみたいと思います。

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・長丁場になる覚悟

受賞から出版までおよそ3年の歳月を要したように、長丁場になる覚悟をしっかりしておけばよかった……と思っています。
もちろんそうそう簡単にいかないであろうことは認識していたものの、どんなに長くても受賞から1年ほどあればリリースに漕ぎつけるだろうと勝手に目算していたのです。

個別に事情は異なるためあくまで本作でのことですが、書籍化打診の連絡までの待機期間を含めて2年9か月ほどかかっています。
もっとも時間を要したのは改稿作業で、全体の70%ほどは原作のWEB版から新たに書き起こしたものです。
その間にはさまざまな事情で執筆が予定通りに進められないこともあり、編集部での確認・承認に予想外の時間がかかることもありました。
出版社という組織内で担当編集者が単独の裁量ですべてを進行することは余程の事情がない限り考えにくく、その上長、そして編集長と丁寧に確認・フィードバックしてくださったためと理解しています。

それに編集者は通常いくつもの案件を同時に抱えているため、個別の作品にかけられる時間もまちまちでしょう。
そのため必ずしも「〇〇万文字の原稿なら〇年」といった目安を決められるものではなく、スピーディーに刊行できるケースもあれば私のように比較的長期間を要する場合もあります。
そうした意味でも、出版に数年かかるパターンにも心づもりをしておくべきだったと振り返っています。

参考までに、同じ第9回歴史・時代小説大賞で受賞された他の先生方の作品について、出版までの期間を早い順に掲載しておきましょう。
(以下敬称略)

【特別賞】
・藍上イオタ『仕舞屋蘭方医 根古屋冲有 お江戸事件帖 人魚とおはぎ』
2024年11月26日発売(出版まで約1年5か月)

【大賞】
・皐月なおみ『田楽屋のぶの店先日記 ~深川人情事件帖~』
 2025年5月27日発売(出版まで約1年11か月)

【特別賞】
・五月雨輝『剣影、桜下に哭く 剣客黒須新九郎 城戸家騒動録』
2025年10月28日発売(出版まで約2年4か月)

【読めばお腹がすく江戸グルメ賞】
・松風勇水『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』
2025年12月2日発売(出版まで約2年5か月)

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・プロット作成の訓練

小説における「プロット」とはお話のあらすじや主要登場人物、各種の設定などを記載した設計図のようなもののことです。
書き手にはさまざまなタイプがおり、私は今回の商業出版まで一度もプロットを作ってから執筆したことがありませんでした。

一人で制作する分には一向に困りはしないのですが、出版にあたってはまず担当編集者に、そして版元に物語の構想を確認してもらってブラッシュアップするためにプロットは不可欠でした。
一般企業でのプロジェクトでもそうですよね。どんなに面白いことを思いついても、企画書を関係者・権限者が読んでOKしない限り実現には至りません。

私はそれまで自分の頭の中にしかなかった物語を、プロットという形で他者に示すことがこんなに難しいものかと愕然としました。
それというのも自身の書き方があらかじめ計画的にストーリーを設計するというより、もっと感覚的に、たとえば目の前で上映されている映画の内容を書き写すようなイメージで進めていたためです。

その一方で詳細なプロットを作るようになったことで、書き始めてから展開に悩んで筆が止まるようなことはなくなりました。
何よりも編集者・出版社とタッグを組んでの作業であるため、プロットを作成することは相手を納得させる企画書を用意するような感覚で取り組んでおくべきだったと痛感しています。

・回答期限の確認

これは他の作家さんの体験談でもしばしば見聞きしますが、編集者・出版社とのやりとりにおいてはお互いに目安でよいので回答期限を確認しておくことが望ましいと感じました。
例えばこちらの原稿提出はいついつまでに、と仮のスケジュールを擦り合わせるのが一般的と思いますが、いつまでにその回答をもらえるかは必ずしも明示されると限りません。

結論からいうと編集者だけのスケジュールではなく、承認が必要な上長や編集長が設定した期日までに確認して次のステップに進めるかは確約できないためといえるでしょう。
しかし、状況によっては数か月にわたって連絡がなかったり、最悪の場合は著者に通知がないまま凍結状態になったりといった事態もあるといいます。

一般企業であれば到底考えられないこと、許されるものではないことと思われますが、残念ながらそうしたトラブルが実在することは周知の通りです。
それには作者として出版側への遠慮や、返信を督促することへの躊躇といった心理が関係しているのではないかと想像します。
しかしながら、これは単純に社会人同士のごく当然の約束事です。
よしんばこれが業界の商習慣であったとしても、長期間連絡がないとうのは言語道断です。

そこで、仮でよいので編集者や出版社にはいつ頃までに返事をいただけそうか、必ず確認しておくことが重要と考えます。
もちろんその予定通りにいかないこともままありますが、そういう場合でも期日を過ぎたら「進捗いかがでしょうか」という問い合わせをしやすくなるため、リマインドの意味でも有効です。

やはりいち作者対出版社という構図ではつい気後れしてしまいそうになりますが、ごく当たり前のスケジュール管理には、トラブルを避けるためにも十分な配慮が必要でしょう。
その上で、編集者・出版社といった相手方の苦心と骨折りにも心を寄せて、チーム戦としての心構えを再認識して執筆にあたりたいものと思いました。

記:帯刀古禄

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