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「旧暦」には7種類もの暦がある? 日本の歴史で気を付けるべきカレンダーの種類を解説!

歴史トピック
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今でも「旧正月」や「旧七夕」などなど、旧暦での行事が知られていますね。

旧暦とはざっくりと昔のカレンダーで使っていた暦法とはわかるものの、具体的なことはよくわからないというのが本音ではないでしょうか。

ですが歴史小説や時代小説において、各時代にどのような暦法が使われていたのかは重要な社会背景になり得ます。

「旧暦」と一口に言ってもそれは明治の太陽暦導入以前に用いられたカレンダーの総称で、歴史上いくつかの暦法が使われてきました。

本記事ではそんな旧暦の概要と、導入された暦法の種類を解説します。

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そもそも「旧暦」って?

「旧暦」とはその名の通り改暦の前に使われていた古い暦法のことで、日本では明治6年(1873年)以前のカレンダーを指す総称です。
一方明治6年からのものは「新暦」、あるいは西洋から取り入れたことから「西暦」とも呼ばれますね。

明治改暦を取り巻くあれこれは別稿に譲るとして、ごく簡単にいうと旧暦は月の満ち欠けと太陽の運行を合わせた「太陰太陽暦」、新暦(グレゴリオ暦)は太陽の運行で一年を捉える「太陽暦」です。

歴史小説や時代小説で多く舞台となるのは江戸時代や戦国時代かと思いますが、当然その頃には旧暦が使われていました。

しかし単に旧暦といっても実は何度かの改暦があって、それぞれ異なる暦法が使われていたのです。

次にその歴史的な流れを概観してみましょう。

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日本史上の暦法一覧

日本史上で暦の使用が分かっているのは飛鳥時代からのことです。

当初は現在の中国で作成されたものが専門の技術者と共に、半島や大陸を経由してもたらされました。

暦法の種類と日本で使用が開始された年、作成された国と大まかな特徴を以下の表にまとめました。

   暦法名使用が開始された年作成国特徴
1元嘉暦(げんかれき)持統天皇6(692)年宋(南朝)百済を経由してもたらされた、日本最古の暦法。
2儀鳳暦(ぎほうれき)文武天皇元(697)年新羅を経由してもたらされ、当初は元嘉暦と併用された。
3大衍暦(たいえんれき)天平宝字8(764)年天文学的な精度は高いが一年が実際よりも長い。
4五紀暦(ごきれき)天安2(858)年五紀とは歳・月・日・星辰・暦数。
日本での使用は4年のみ。
5宣明暦(せんみょうれき)貞観4(862)年平安時代にもたらされ、823年に
わたって使われた。
6貞享暦(じょうきょうれき)貞享2(1685)年日本初の国産暦。元の授時暦をもとに
作られた。
7宝暦暦(ほうれき/りゃくれき)宝暦5(1755)年日本貞享暦をわずかに補正した暦。
日食予測に失敗し改暦。
8寛政暦(かんせいれき)寛政10(1798)年日本ケプラーの法則など間接的に
西洋天文学を取り入れた暦。
9天保暦(てんぽうれき)弘化元(1844)年日本日本最後の太陰太陽暦で、
西洋天文学の成果を直接反映。
参考:国立国会図書館「日本の暦 第一章暦の歴史

以上が「旧暦」と総称され、日本で公式に用いられてきた暦の概要です。

特に平安時代~江戸時代(17世紀終わり頃)まで、823年にもわたって使われた№5の「宣明暦」が目を引きますね。
この暦は非常に精巧でしたが徐々に実際の天行とずれが生じ、800年の間に2日の誤差が出ていました。つまり立春や冬至などの二十四節気が、暦の上では最終的に現実の2日後になってしまったのです。

そこで渋川春海らによる初の国産暦である№6の貞享暦へと改暦されるのは、小説や映画の『天地明察』でおなじみですね。

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歴史創作での注意点は「1か月の日数」!

引用:『古暦』,刊. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/8929571 (参照 2024-02-28)(元禄十六癸未暦)

暦を作るのは本来は陰陽師の仕事であり、京の都で作成されたものが各地へともたらされました。

しかしやがて独自の地方暦が作られるようになり、中世には伊勢の丹生暦や伊豆の三嶋暦などがすでに存在したことが知られています。

したがって戦国時代についてもカレンダーの基礎は平安以来の宣明暦です。

そして江戸時代には初の国産暦登場をはじめとして、計4回の改暦があったことを押さえておきましょう。

一方では正直なところ、歴史創作で暦法にまで言及するのは相当マニアックといえるかもしれませんね。

そこでぜひ覚えておきたいたった一つのポイントをお伝えします。

それは「1か月の日数」。

現在のカレンダーでは2月を除いて1か月は30日か31日と決まっています。

一方、旧暦は「29日」か「30日」までのいずれかで、しかも毎年どの月がそうなるか変動する特徴を持っているのです。

これは旧暦の1か月が太陰暦、つまり月の満ち欠けをもとにしているためで、朔望周期が約29.5日であることに由来し新月の日が「一日(ついたち)」となります。

29日までの月は「小の月」、30日までなら「大の月」と呼ばれ、補正のための閏(うるう)は一定の法則で1年を13か月にすることで対応しました。

そのため年によっては「2月30日」まであることも。

さらに詳しいお話はまた別の記事で触れるとして、まずはこれだけでも参考にしていただければ幸いです!

帯刀コロク・記

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