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『伊緒さんのお嫁ご飯』のできるまで ② ―執筆編―

物書きばなし
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通勤電車の中、スマホで書いた

『伊緒さんのお嫁ご飯』で、初めてスマホで小説を書くという経験をしました。
それまでは机に向かってPCで書く、というのが基本でしたが、これで空き時間の多くを執筆にあてることができるようになりました。
フリック入力での執筆、というのに当初抵抗があったのですが、慣れるとむしろ感覚的に文章が生まれる際にレスポンスの速さを快適に感じました。
このおかげで、通勤電車が完全に書斎代わりになってくれました。

出社前、喫茶店で書いた

わたしは朝、早めに会社の近くに着いて喫茶店で本を読んだり、資料を確認したりするのが習慣でした。
スマホで小説を書くようになってから、その朝のひと時を執筆にあてられるようになりました。
もっとも書く分量がはかどったのが、この時間だったと思います。
連作短編として発表していたお嫁ご飯ですが、ほぼ2~3日に一度程度の頻度で更新し続けられたのは、モーニングのおかげともいえるでしょう。

お昼休みや休憩時間にも書いた

会社員ですので、日中はまじめにお仕事をしています。
しかし、ふとした拍子にアイディアが浮かんだり、または伊緒さんをはじめとしたキャラクターたちが動き出すのが見えたりします。
以前の記事で触れましたが、わたしは「観察者型(オブザーバータイプ)」のようで、予期せぬ時にも目の前で物語が展開されることがよくあります。

それを手帳に書き留めたり、覚えておいたりして、お昼休みや休憩時間に鮮明なイメージを保って書いていきました。
思えば、書いている間は毎日とても楽しかったものです。

4つのタイプ別!「小説の書き方」について考えた
「小説の書き方」って、どうしてますか?「小説を書きたいんですけど、なかなか上手くいかなくて……。どうやって書いてるんですか?」 という相談を受けることがよくあります。 「えーっ? もうそんなの、好きなようにどんどん書いちゃってください! わははは」などと、お茶を濁してきたのですがそういえば、「どうやって書いているか」って、ほとんど意識したことがありませんでした。書きたいけどなかなか書………………~続きを読む~

プロットはまったくなかった

『伊緒さんのお嫁ご飯』は全部で72話、20万文字弱の作品になりましたが、プロットは一切書かずに進行しました。
1話3,000文字程度の連作短編というスタイルが可能にした面もあるのですが、作者の意図をはるかに離れたところで、キャラクターが生き生きと動いてくれたことが起因しています。
自分でも不思議な感覚ですが、彼女たちがわいわいと楽しそうに生活している様子を、傍から眺めているような状態でした。
以前に長編の歴史小説を書いた際も、プロットは簡易的にサブタイトルを設定したのみで、ほぼ頭の中だけで作業をしていました。
が、それすらまったく用意せずに書けたのは、日常をテーマにしたことが大きかったのだと思います。

5話ごとに「箸休め」。外食や男料理のエピソード

設計らしい設計はほとんどしなかった本作ですが、唯一「箸休め」というエピソードを意図的に設けました。
普段は主人公の伊緒さんがつくる料理がメインですが、5話ごとに外食や旦那さんの晃くんがつくるもの、あるいは簡単なメニューなどを取り上げました。
お話に変化をもたせたかったのと、いつも全力で料理してくれている伊緒さんへの労いの気持ちも込めました。
結果として、番外編につなぐ自然なルートになったり、新しいキャラクターを違和感なく登場させる装置として機能してくれました。
甘味やお酒の話など、本編であまり扱わなかったジャンルにも触れる機会となりました。

書いた時期の季節感があらわれた

このお話は、10月の下旬から書き始めて翌年の6月で完結しています。
盛夏を除く約8か月の間で、できる限り春夏秋冬のメニューが入るようにしましたが、やはり書いていた時期の旬が影響しています。
寒い時には鍋料理や汁物、春先には山菜など、リアルタイムの料理や食材が登場します。
規則的かつまんべんなく、各季節のメニューを入れてもよかったのですが、実感を込めて書けたことはよい経験になりました。
自分自身が「さむいさむい!」と思いながら、焦がれるような気持ちで温かい料理の描写を行ったのは、忘れえぬ思い出です。

メニューはすべて家庭でできるものに

本作に込めた、わたしのこだわりのひとつがこれです。
家庭でできるもの。
『伊緒さんのお嫁ご飯』に登場するメニューの9割ほどは、実際に自分や家族がつくった経験のあるものばかりです。
一度は挑戦したもののため、レシピにも一定の実感を込めることができたと思います。
家庭料理ですので味付けは目分量ですが、食べる人の体調やその時の要求に応じて柔軟に調節する様子を描きました。
グルメではなく、「食卓」そのものを表現したかったという願いが、家庭でできる料理に限定した理由です。

~その③に続く~

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