“歴史小説”の執筆を助ける6つのポイントについて

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根強い人気ジャンルの“歴史小説”

小説を書かれる方には、それぞれの目指すテーマや得意なジャンルがあるかと思います。
なかでも、伝統的な人気を誇るジャンルとして“歴史小説”があり、華々しさでは他に譲るものの骨太な名作が数多く生み出されています。

そんな歴史小説ですが、層が厚く先達の実績も大きいため、どのように手をつけるべきか悩ましいところでもあります。
そこで、今回は歴史小説を書くうえでの技術的なポイントについて、自身の体験をもとに分析してみたいと思います!

歴史の“裏側”からスポットライトを当てる

歴史はそれそのものが壮大なドラマです。
ゆえに、どこを切り取っても物語になっており、それだけにより難しさを感じる分野でもあります。
また、すでに繰り返し主題として取り上げられているエピソードや人物も多く、それに人気があるほど同テーマでの新規参入にはハードルの高さを感じるでしょう。

しかし、歴史においては「語り尽くした」ということはないといわれています。
なぜならば「史実」としての記録はごく限られたものであり、圧倒的多数の「事実」は謎のままであるからです。
したがって、ここにこそ作家が小説という武器で歴史に迫る余地があるものと考えます。

そこでヒントとなるのが、“歴史の裏側からスポットライトを当てる”という方法です。
これはこれはあるトピックに対して、「物語の主人公を当事者以外の関係者に設定する」ことなどで可能となります。
たとえば有名な「本能寺の変」を描くならば、信長か光秀、あるいは秀吉あたりが主人公としてイメージされます。
が、そこをあえて裏方の名もなき人物を中心に据えるとします。
思いつくまま例を挙げると、「本能寺で修行する若き僧侶」であるとか、「中国大返しに従軍した足軽」であるとか、そういった人たちから見た歴史を描くことで同じトピックでも新鮮味を得ることができます。

つまり「視点を変える」ことがポイントで、この方法によって歴史小説は同じテーマでも無限のバリエーションを獲得することが可能となります。

可能な限り“一次史料”を読み込む

どんな小説でも資料集めは大切な作業ですが、歴史小説においてはその比重がより大きくなります。
「資料」だけではなく「史料」も必要となり、歴史そのものへの研究的な姿勢が求められるからでもあります。

ここで重要なのが、できる限り「一次史料」を読み込むということです。
一次史料とはある出来事についてのオリジナルの記述がなされた文献を主に指し、多くはいわゆる古文書にあたります。
もちろん、古文書をそのまま読解するのには訓練が要りますが、それについての研究論文や活字に起こして印刷したものなどが、WEB上でも容易に手に入ります。

たとえば「国立国会図書館」のデジタルコレクションでは、それらの画像データを無料で閲覧することができます。
また、研究論文もPDFで一般公開しているものが数多くあり、史料集めの強力な味方となってくれるでしょう。

なぜ一次史料が重要なのかというと、定説のようにインプットされたイメージのなかには、後の小説やドラマなどによって定着してしまったものがあるためです。
オリジナルの記述や記録はどうなのかということを、自分なりに理解することで自身の作品作りに大きな影響を与えます。

わたしはデビュー作の『吠声(はいせい)』を書いたときには、平安時代に完成した律令の施行細則である『延喜式』のコピーを肌身離さず持ち歩き、ことあるごとに読み返していました。
また、『龍馬アンローデッド』で伊呂波丸事件のことを調べていたときは、『南紀徳川史』を同様に読みふけっていました。
そのことによって、小説への肉付けの方向性が、はっきりと見えてくるという効果を実感しています。

歴史に干渉しない“ノンプレイヤーキャラ”を作り込む

歴史小説を書く場合、やはり実在の人物をまったく描かずに済ませることは難しいでしょう。
しかし、そういったキャラクター設定に関しても、史実を尊重しつつも作家の裁量次第となります。

そこで、歴史に干渉しない立場での“ノンプレイヤーキャラ”をしっかりと作り込むことがポイントとなります。
たとえば、有名な実在した武将Aを主人公にした小説を書くとしましょう。
そこに、「記録にはないが、いたかもしれない」人物を登場させるのです。
幼少期に出会って思想に影響を与えた旅の僧、密かに思いを寄せあったものの結ばれなかった女性、若くして戦場で散った親友、等々、主人公に少なからぬ影響力をもつ人物が望ましいでしょう。

もちろん、これは記録にある人物を起用しても構いませんし、そういった存在をヒントにして創作するのも方法です。
原則として、物語には絡んでも歴史には干渉しないことが重要で、これによって史実の制約を超えて小説世界に広がりをもたせることが可能となります。

ストーリーテラーとしての“目明し文吉”を登場させる

歴史小説で大切なことのひとつに、「史実の説明」があります。
これは地の文で行うことも可能ですが、物語の雰囲気によっては作者の解説を挟みたくない場合もありますね。
そんな時にとても便利なのが、“ストーリーテラー”の役割を担ったキャラクターを登場させることです。
たとえば、司馬遼太郎作品には同心の配下の“目明しの某”などが登場し、ストーリーテラーとして活躍します。
こういった人物は裏社会の顔役でもあり、ごく自然に物語のヒントや核心を読者に伝えるという行動が可能となります。
仮のこのような人物を、“目明し文吉型”のキャラクターと呼ぶとしましょう。

わたしは『龍馬アンローデッド』では目明し文吉型のキャラとして、紀伊御庭番の「しのぶ」というくノ一を登場させました。
諜報活動の成果、という形で主人公との会話に自然と歴史や当時の情勢を織り込むことができ、作者としてもとても頼りになるキャラクターとなりました。

リアリティを出すには現地取材が効果的

小説を書くうえで、舞台となる現地に赴くかどうかというのは作家によって分かれるところのようです。
もちろん、時間的・金銭的な制約もありますが、浅田次郎さんはあえて現地取材を行わず、想像に徹すると聞いたことがあります。
一方、朝井まかてさんはできる限り現地を訪れるようにしているそうで、「場が書かせる」ことがあるという旨のことを書いています。
また、塩野七生さんは巻き尺を持参して、街道の幅を実測するなど徹底した現場主義をお持ちだそうです。

わたしがこれまで書いた歴史小説については、いずれも現地取材を行っています。
『吠声』では隼人の本拠地である鹿児島県や宮崎県の遺跡を巡り、奈良の平城京で大極殿や敷地の広さを体感しました。
『龍馬アンローデッド』では広島県の鞆の浦を訪れ、龍馬たち海援隊や紀州藩のクルーが上陸した港、宿舎、町並みなどを細かく観察することができました。
また、海援隊宿舎では龍馬が潜伏した中二階の隠し部屋に入ることができ、大いにイメージが補強されたものです。

わたしの場合はお仕事ではないので、旅行のついでに取材を行うという程度ですが、やはり想像と現場はまったく異なることが多いように思います。
自分の目で見て、自分の足で歩くことでしか得られないものは確かにあるので、可能な範囲で現地取材は行いたいものと思っています。

一般的なイメージをあえて崩してみる

最後に、物語の設定として試みたいことをご紹介します。
それは、一般的によく知られた歴史のイメージを、あえて崩してみることです。
もちろん荒唐無稽な新設定が必要なわけではなく、ほんの少し人物などの捉え方を変えてみるのです。
たとえば、織田信長といえば「第六天魔王」の名乗り通り、いかにも恐ろしげな印象があるでしょう。
ですが、若い頃の信長は家督を継いでも家臣団が必ずしも従順ではなく、ずいぶんと統率に苦心したことがうかがえます。
そこで、信長を「家業を継いだ中小企業の若社長」、家臣団を「新経営体制に反発する古参社員たち」に例えて見直してみてはどうでしょう。
急に卑近かつ、親近感が湧いたように感じないでしょうか。
歴史上の人物はそのものが伝説であり、ともすると神格化された存在になりがちです。
しかしいずれも一人の人間であり、現代に生きる私たち同様の悩みや苦しみを抱えていたはずです。
そんな等身大の視点を通じて歴史を見直してみることで、従来のイメージとは異なる、新たな独自視点への扉が開けるのではないでしょうか。

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