やはり最多の「憑依型」作家さん
物書き仲間の皆様におかれましては、いつも「すずしろブログ」をご覧頂き、まことにありがとうございます。
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ぜんぶで4種の作家タイプを分類していますが、なかでも群を抜いて多かったのが「憑依型(シャーマンタイプ)」の作家さんでした。
いわゆる「降りてきた」体験で書く直感武闘派な皆様ですが、ある方からこのようなご意見をうかがいました。
「プロットが書けねえ」
なるほど。なるほど。
そうですよねえ。
ほとんど自分の意思とは関係なく物語が「降りて」きて、それを書き連ねていくと必ずしも理路整然としたものにはなりませんよね。
でも、ご安心ください。
そんなシャーマンタイプの同志諸氏に、憑依型であるからこその強みを最大限に発揮する制作ヒントをお伝えします。
なお、若い方にもよりわかりやすいよう、『シャーマンキング』にたとえて記述していきたいと思います。
まずは、「降りてくる」状態を段階ごとに分類し、そのメリット・デメリットを把握します。
それでは、はりきってまいりましょう!
第1段階、「憑依」
はい。
まずは第1段階として、「憑依」を思い浮かべてください。
つまりは突然「降りて」きて、その激情のまま筆を走らせるあのモードです。
ここで思い出してほしいシャーマンキングのシーンは、「木刀の竜」が「トカゲロウ」に取り憑かれた状態です。
あれはたいへんでしたねえ。
ここで重要なのは、竜の身体はほぼ完全にトカゲロウに乗っ取られていたということです。
自身の肉体が他の意思のコントロール下におかれ、自分ではどうしようもない状態。
シャーマンタイプの「降りてくる」感覚の第1段階がまさにそうで、とんでもないものが書ける反面、それを制御しきれない可能性がある諸刃の剣でもあります。
第2段階、「憑依合体」
シャーマンキングの登場人物たちは、初期には自身の肉体に霊を憑依させてその動きを再現する「憑依合体」を多用していました。
これは霊が生前に有した特技や能力を、自身のコントロール下で発揮する技です。
人格はある程度霊のものに寄りますが、完全に自意識を失うわけではありません。
シャーマンタイプの第2段階として目指したいのが、この「憑依合体」のイメージです。
降りてくるものに対して、自身の意識を失わないまま執筆していくというスタイルで、おそらくシャーマンタイプの作家さんの多くが実践している方法ではないでしょうか。
注意点としては、霊の動き(降りてくるもののキャパ)に耐えられるよう自身の肉体(タイピングの早さとか)を十分鍛えることが必要です。
第3段階、「憑依100%」
シャーマンキングにおける「憑依合体」には、さらにその向こう側があります。
その名も「憑依100%」。
文字どおり霊の力を100%引き出すための技で、強靭な精神力と頑強な肉体の力が必要とされます。
劇中では主人公である「麻倉葉」くんのライバル、「道 蓮(タオ レン)」が披露していましたね。
霊を道具として利用する冷徹さが可能としたスタイルですが、熟練のシャーマンタイプ作家さんもよく似た境地に達するといわれています(誰に)。
「降りて」きたものを俯瞰できるほどの精神的余裕を身につけることができれば、この状態を維持することも難しくはないでしょう。
第4段階、「オーバーソウル」
はい。
出ましたね。「オーバーソウル」です。
若い方にもわかりやすいように、とシャーマンキングに例えているわけですが、念のため解説をお許しください。
霊とのコンビで戦う「シャーマンファイト」では、憑依合体よりさらに上の段階が求められます。
それこそが「オーバーソウル」で、霊を何かしらの「媒介」に封じることで物理的に作用する能力を実現するというものです。
初出ではシャーマンファイト参加資格の試験官「シルバ」が、動物の精霊を羽飾りや指輪の媒介で鎧のように具現化していました。
主人公の葉くんも持霊の「阿弥陀丸」を刀の「春雨」にインして、新たな力を得ることに成功しましたね。
憑依合体ではどちらかというと霊自体の強さに戦局が左右されましたが、オーバーソウルは術者自身の「巫力(ふりょく)」、つまり霊力のようなものが重要となります。
シャーマンタイプの作家としては、このオーバーソウルこそが目指すべき境地のひとつといえるでしょう。
「降りてくる」経験に身を委ねきるのではなく、それをうまくコントロールして「作品」へと具現化する……。
すなわち「オーバーソウル・イン・ペン」。
これが言いたかった。
実際にはペンよりもタイピングやフリックで書く作家さんが多いのかもしれませんが、「書く」というイメージにはペンがその象徴であろうと思われます。
巫力は思いの力。
執筆もまた、思いの力。
よみがえれ。
第5段階、「甲縛式オーバーソウル」
オーバーソウルを実現した作家さんは、シャーマンタイプとしてはすでに完成された境地にあるといえます。
しかし、まださらに「その向こう側」があります。
それこそが「甲縛式オーバーソウル」。
術者の身体全体を守るようなコンパクトな姿ながら、効率よく能力を発揮できる洗練された姿です。
これを執筆スタイルに当てはめると……というお話ではなく、ここまできたら言わずにおれなかったというだけのこと。
ごめんなさい。
憑依型作家におすすめ、「連想筆記式メモランダム」
さて、いよいよ本題です。
シャーマンタイプで「プロットが書けない」という悩みを解消するのに、上記シャーマンキングで例えた憑依の「段階」を意識するという方法がひとつ。
もうひとつ具体的なこととして、「降りてきた」ものを直接書くのではなく、一度「メモランダム」としてアウトプットしておくという方法があります。
このとき、もちろんスマホやパソコンでもよいのですが、できれば「紙にペン」で行うことをおすすめします。
それというのも、手帳などを使えば即時性があるため思いついた時にすぐ書いておけるこということ、そして絵や図も即座に描けるというメリットがあるためです。
憑依型の作家さんが「降りてきた」と感じるものは、必ずしもその都度連続していたり整合性がとれていたりするとは限らないでしょう。
そのため、無理にひとつの物語として出力しようとするのではなく、まずはいくつもの「物語の断片」としてメモしておくのです。
なんということはない方法で、すでに同じことをしておられる方も多いでしょう。
わたしも愛用している「歴史手帳」のメモ欄に、突如「降りてきた」ものを脈絡なく書き留めています。
これを「連想筆記式メモランダム」と名づけます。
つくるのは「プロットそのもの」ではなく、「プロットの卵」
上記のメモランダムが積み重なっていくとどうなるでしょうか。
おそらくてんでバラバラな思い付きのカケラたちが、あはは・ウフフと紙面に踊り狂う状態となるでしょう。
でも、それこそがシャーマンタイプの作家の真骨頂なのです。
頃合いを見て、それらを読み返してみましょう。
「こんなこと書いたっけ」
そう思うようなアイディアでいっぱいになっているのではないでしょうか。
それは一見脈絡のないように感じるかもしれませんが、ひとつひとつが「降りてきた」体験に裏打ちされた、構想ヒントの宝庫です。
シャーマンタイプの作家がうまくアイディアを作品としてまとめるためには、いきなりプロットそのものを書くのではなく、原案になる「プロットの卵」をしっかりと温める必要があります。
その時にこそ、上記のメモランダムでの蓄積が役に立ちます。
「降りてきた」ものを憑依合体的にコントロールしつつメモに落とし込み、そうしておいてオーバーソウル的に作品へと昇華させる。
そんなイメージでしょうか。
憑依型の強みは素晴らしい筆の勢いと、時に自身の意思とはかけ離れたようにも感じられる発想です。
そんな武器を、なんとかして執筆にうまく活かしていきたいではありませんか。
最後に、葉くんのいつもの言葉で締めくくりたいと思います。
「なんとかなる」。
お目通し、ありがとうございました。
三條すずしろ・記
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