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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第2章 影打・南紀重國の刀と由良さんの秘密

刀とあやかし文化財パトロール本物の日本刀を手入れする様子を見るなんて、もちろん初めてのことだ。刀そのものは、博物館の展示ケース越しには何度も目にしたことがある。けれど遮るものもなく眼前にあるそれは、工芸品というよりむしろ命を宿した何かのようだった。緋袴の装束姿の由良さんが、端座して口に懐紙をくわえ、刀身全体に打ち粉を打っている。打ち粉とは、時代劇なんかで侍が刀をポンポンと叩いているあのぼんぼり状の道具のことだ。球の中………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あやかし文化財レポート・その1

ピークを越えつつある桜が、風に吹かれて盛大な花吹雪を舞い上げた。昼間の瀬乃神宮は夜とは打って変わって穏やかで、「bar 暦」もいまは「cafe 暦」の看板を出している。先日と同じカウンターチェアに腰掛けたわたしの目の前で、由良さんがコーヒーをドリップしてくれている。芳しくふくよかな香りは、花散る午後にぴったりな気がする。あの悪夢のような夜の出来事は、正直いってとても現実とは思えない。けれどわたしが目を覚ましたのは瀬乃………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第1章 陵山古墳と蛇行剣の王

零神宮と麗人の酒家夜の神社に来るのは初めてかもしれない。4月とはいえ空気はしっとりと肌寒く、短い参道沿いの桜は故郷の雪と見紛う白さだ。和歌山、といえば南国のイメージが強かったけど、山間のこの街は意外と気温が低い。石灯籠には本物の蝋燭が点され、灯芯がチヂッと揺らめくたび周囲の闇が形を変える。「神さんに挨拶だけ、しといたしかええわ」ここを教えてくれた先輩先生のアドバイスに従って拝殿に立ち、そっと鈴の緒を引いた。思いのほか………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】プロローグ

~境界をくぐるとき~夕暮れ時の橋を渡るときとか、列車で長いトンネルに入るときとか。きんっ、と耳の奥に鍵をかけられたような音がして、少しの頭痛とともにふわっと身体が浮き上がるような感覚に襲われたことはないだろうか。なんだか自分が自分ではないような、それまでいた時空からぽんっと放り出されて漂うかのような、不思議な感じ。わたしは、こどもの頃からずっとそうだった。橋を渡りきったりトンネルを抜けたりした瞬間に、何事もなかったか………………~続きを読む~
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パンと龍 ~江川英龍の幕末麺麭レシピ~

「かてェな」その煎餅のようなもののあまりの固さに顔をしかめたのは、むしろ川原石でも平気で嚙み砕きそうな面構えの偉丈夫だ。太い首の筋が浮き彫りになり、戯言ではなく文字通り歯が立たない食い物であることがうかがえる。「噛めませぬか」その様子を注視していた向かいの男がぎょろりと大きな眼を巡らせ、言い放つ。「丹田に気を下ろして噛まれませい。兜を断ち割る気構えにて」兜を割るつもりで噛まねばならぬ食い物などあってたまるものか。二人………………~続きを読む~
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九郎義経の恋人、静御前の魂が舞う!能楽『二人静』を鑑賞して、圧巻のシンクロに号泣した話

人生初の能楽チケット購入!前から興味はあったけど、なかなかハードルが高そうで踏み切れない……。わたしにとってその一つが「能楽」の鑑賞です。一度ちゃんと観てみたいな~、と思いつつ「やっぱ難しそう」と先延ばしにしていた能楽。ところが、在所のすぐ近くの町で格安の能楽公演があったのです。これはチャンス!とばかりに、人生初の能楽チケットを購入したのでした。吉野・大淀町は能楽の聖地その公演が行われたのは奈良県吉野郡の「大淀町」。………………~続きを読む~
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明智光秀公の墓所にもお参り! 苔むした石塔と巨樹の霊場、高野山「奥之院」を歩く

「日本国総菩提寺」、山上の聖地・高野山「日本の総菩提寺」とも例えられる紀伊国・高野山。標高約800mの山地におよそ120もの寺院がひしめく宗教都市としての威容を誇り、弘法大師・空海が開創した真言密教の総本山として知られています。 その中でも、空海がいまだ禅定を続けているという信仰のある「御廟」と、その参道沿いに約20万基もの石塔や供養塔が建ち並ぶ「奥之院」。ここが高野山の信仰の中枢といっても過言ではありません。苔むし………………~続きを読む~
歴史トピック

紀伊「丹鶴城」! 太平洋と熊野川に面した、水陸の要塞址をゆく

熊野速玉大社で有名、和歌山県新宮市の「新宮城」お城といえば「天守閣」を備えた建築を想像しますが、構造物が失われて石垣のみが残っている城址も、実に風情があるものですね。荒城にてかつての栄華に思いを馳せ、幾重もの櫓がそびえた往時を想像する――。歴史のロマンを感じるひと時です。今回は熊野古道や熊野三山の速玉大社で有名な和歌山県新宮市の、「新宮城」についてのレポートです。新宮城、またの名を「丹鶴城」とは紀州新宮藩の本拠・新宮………………~続きを読む~
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【WEB小説】『柚子とさば骨』

さっきから幾度となく魚焼きグリルを覗いては、固唾をのんで焼き加減を見守っている。  約束の時間は十二時半だけど、彼のことだからおそらくマナーどおりに五分ほど遅れて訪いを告げるに違いない。  いまかいまかと焼き上がりが待たれるノルウェーさばを筆頭に、メニューはもう実にありふれた、といった感じのものをなるべく自然にみえるようチョイスした。ただしなるべく旬の野菜をつかって、ひと皿ひと皿はっきり違う味付けにすることを心がけた………………~続きを読む~
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【WEB小説】『フナダマ』

船内の小さな神棚に塩と洗米を供え、ゴロージは恭しく拍手を打った。 出港前に船のすべてを検め、最後に神棚に礼拝するのは、ゴロージが船頭になってから欠かさない習慣だった。 かつて、船を新造するとその帆柱の根元に古銭や近しい女の髪などを納め、船の魂の拠り所としたという。 「フナダマ」と呼ばれるそれは、船と船乗りたちを守る霊力をもつと信じられ、時代が変わったいまもゴロージは頑なにその伝統を守っていた。   こうして礼拝を終え………………~続きを読む~
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第一献 とりあえずのビールと、コリコリ砂肝にんにく炒め

ビールほど日本人に愛されているお酒はないかもしれない。 なぜなら「とりあえず」と言って注文するものなんて、ほかにはとんと聞かないから。「“生”でええやんな?」「“生”の人はー?」といえばもちろん生ビールのことで、最初の乾杯にはほぼこれ一択という雰囲気だ。 “ホット”といえばコーヒーを指すように、“生”といえばすなわちビール。「とりあえず生」の合言葉が、今夜も全国の酒場で繰り返されるだろう。 ぼくはあんまりお酒に強くな………………~続きを読む~
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第二献 郷愁のウイスキーと、あつあつローストナッツ

焚き火のにおい、ってご存じでしょうか?木がはぜるときの、香ばしくどこか甘やかな煙のにおい。たぶん、これまでの人生でそう何度も体験したわけではないはずなのに、どうにもたまらなく懐かしいような、切なくあたたかいにおい。きっと焚き火には、遠い遠い祖先から受け継いだ、太古の記憶を呼び覚ます力があるのではないでしょうか。でも、実際に火を前にしているわけではないのに、そんな素敵な共感覚を起こしてくれる飲み物があるのです。それは、………………~続きを読む~
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第三献 あまくち日本酒と、お正月でもないのに伊達巻き

同じ原料からつくるのに、お酒ってどうしてこうも味わいが違うのだろうと、いつも不思議で仕方ない。いや、正確に言うと原料が同じというのは使う素材の種類のことで、品種や銘柄によって特徴が違うことはわかる気がする。ただ、単に「麦」といってもそれからビールやウイスキー、焼酎など全然風情の異なるお酒ができる、というのがとっても面白いのだ。「酒」といえば日本語ではつまり日本酒のことを指す場合も多いけど、ぼくはこの日本酒が一番ファン………………~続きを読む~
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635段を登る! 紀北のパワースポット「不動山の巨石」

神様の工事途中、という伝説の巨石群日本独特の山岳信仰である「修験道(しゅげんどう)」。山に登って霊力を鍛え上げ、神も仏も祀るという「山伏」の登山宗教です。この修験道の開祖が「役小角(えんのおづぬ)」。古代氏族・賀茂氏の出身で、現在の金剛山(葛城山)は役小角ゆかりの行場としてよく知られています。そんな金剛山に連なる山々には多くの伝説が残り、和歌山県橋本市の「不動山」という所にもそのひとつが伝わっています。そこには山中な………………~続きを読む~
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“日本最強の城”と呼ばれる山城「高取城」に登って、どう最強なのか確かめてきた

奈良県明日香村のお隣、日本三大山城のひとつ「高取城」「山城」が密かなブームだそうですね。天守閣や櫓などで構築された、よくイメージするお城とは異なり、山そのものの自然地形を利用して要塞化したものが山城です。中世までによくみられた城塞の形で、堀や土塁の跡をいまでも確認できる遺跡がたくさんあります。当時のリアルな様子を伝える独特の風情で人気の山城ですが、岡山県の「備中松山城」、岐阜県の「美濃岩村城」、そして奈良県の「高取城………………~続きを読む~
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紀伊国北部最大級の山城、「長藪城」の址に登ってきた

山そのものが要塞! 中世山城の威容みんな大好き日本のお城。歴史が好きな三條も、もちろんお城が大好きです。県庁所在地などには特に、旧藩時代の城郭が残っていて(あるいは再建されて)、街の象徴として愛されていますね。天守閣を備えた、いわゆる「近世城郭」もかっこいいのですが、最近激しく心揺さぶられているのが「山城」です。文字通り、山の自然地形そのものを要塞化した中世のお城のことです。天守のような派手な構造物はありませんが、敵………………~続きを読む~
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【WEB小説】『伊緒さんの食べものがたり』 ―目次―

いっしょだと、なんだっておいしいーー。伊緒さんだって、たまにはインスタントで済ませたり、旅先の名物に舌鼓を打ったりもするのです……。そんな「手作らず」な料理の数々も、今度のご飯の大事なヒント。 いっしょに食べると、なんだっておいしい!『伊緒さんのお嫁ご飯』からほんの少し未来の、異なる時間軸のお話です。「アルファポリス」「エブリスタ」「カクヨム」にても公開中です。目次
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第1膳 ここぞとばかりの「カップ麺」。これまた妙においしかったり

それはもう、ものすごい雨の日でした。 関西にある、かつて夫が育ったお家に引っ越してきた初日のことです。 荷物を解くのはまあ、おっぽらかしておいて、さっそく近くのスーパーに初買い出しに行くべかと思っていた矢先でした。 一天にわかにかき曇り、逆巻く風がすぐ裏手の山に当たって、不気味な唸り声をあげたのです。 あれよと言う間に空は臨界点を迎え、わたしは生まれて初めて「黒雲」が湧き上がる様子を目にしました。 カッ、と青紫のフラ………………~続きを読む~
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第2膳 夏祭り!夜店の食べ物って何でこんなノスタルジックなのでしょう

ぼくの育った地元には大きな川が流れていて、その川原で毎年お盆の頃に夏祭りが行われる。 近隣では有数の規模のお祭りで、盆踊りとか灯籠流しとか打ち上げ花火とか、とにかくフルコースの行事だった。 そしてものすごいのが夜店の屋台で、河川敷いっぱいはおろか、沿道にまでわんさかはみ出してひしめくのだ。 普段は夜になると真っ暗な界隈なのだけど、この日ばかりは遠くからでもその灯りが認められて、幻想世界の夜市が開かれているかのような賑………………~続きを読む~
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第3膳 旅行の朝のバイキング。さあ、狩りの時間がやってきました

お小づかいを貯めてときおり旅行にいくのは、わたしたち夫婦の大きな楽しみのひとつです。 でも、あんまり有名な観光地とかテーマパークとかには行きません。 知る人ぞ知る古代遺跡とか、整備されていない山城の跡とか、万葉歌人が旅した道とか、かなりマニアックな場所を訪ねて歩くのがわたしたちのお気に入りです。「ええ!あったらトコなあーんもねえでやあ!やいやい、モノ好きな姉っこだでなあ!」 的なことをよく言われるのですが、それこそが………………~続きを読む~
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