物語で何度も呼ぶ名。だからこそ、こだわりたい!
小説の登場人物の名前って、みなさんはどのように考えていますか?
パッと頭に浮かんだものや、身近な人からのヒント、あるいはキャラクター像にぴったり合ったものを設計する……等々。
物語中で何度も出てくることは確実で、しかも読者の印象に残る効果も期待されるため、ネーミングにはこだわりたいところですよね。
でも、なかなか「コレだ!」という名前を思いつくのは難しく、しかも登場人物が増えるほどその作業はたいへんになるので、悩ましい問題です。
そこで、小説キャラクターのネーミングについて、わたくし三條すずしろが行っている方法を5つ、ご紹介したいと思います!
ありふれた名前の漢字を変える
インパクトを重視すると、ついつい凝った名前をつけたくなります。
もちろん、唯一無二の個性的なネーミングも作家の腕の見せどころで、作風を形づくるひとつの要素になり得ます。
ですが、あえてシンプルでありふれた名前をつける、という逆手の方法も存在しています。
かえって新鮮味がでる場合もあり、何より覚えやすいというメリットもありますね。
そんなありふれた名前の例を、ベタですが「太郎」とします。
そして、その字をさまざまに変えてみましょう。
- 汰浪
- 她楼
- 埵瑯
- 侘呂宇
- 咑櫓雨
いかがでしょうか。
ちょっとやりすぎ感もありますが、同じ「タロウ」でも字面でずいぶんと印象が違いますね。
同様に「イチロウ」でも「ハナコ」でも、あてる漢字によってさまざまに雰囲気を変えることが可能です。
神話や伝説、古文献から拝借する
ファンタジー要素の強い作品などでよく見受けられる、伝統的な手法です。
『古事記』や『ギリシャ神話』または『聖書』などで神々や聖人の名前を調べてみると、いずれもめちゃくめちゃカッコいいことに気づきますね。
日本神話なら「アマテラス」とか「ツクヨミ」とか、ギリシャ神話なら「ゼウス」とか「プロメテウス」とか。
中二ゴコロがくすぐられる、素敵な名前のオンパレードです。
また、古い文献をヒントにするという方法もあり、わたしは古代日本を舞台にした『吠声(はいせい)』という作品では、『正倉院文書』にある「山城国隼人計帳」という奈良時代の納税者名簿を参考にしました。
男性なら「〇〇マロ」、女性であれば「〇〇メ」など、当時の特徴的な命名法が見てとれるため、新たに奈良時代人キャラの名前を考えるためのヒントになりました。
外国語に漢字をあてる
普通の人名でもよく使われるのが、外来語や外国の命名を使うという方法です。
- 譲司(ジョージ)
- 瑠衣(ルイ)
- 有栖(アリス)
- 鞠亜(マリア)
- 蔵人(クロード)
等々、実際に皆さんのお友達にもおられるのではないでしょうか。
これは小説キャラのネーミングにもたいへん便利な手法で、わたしの作品『伊緒さんのお嫁ご飯』の主人公「伊緒さん」の由来もそうです。
木星の衛星のひとつ「イオ」からとった名前で、惑星に対する“月”のイメージと、声に出した時の呼びやすさを願って命名しました。
あてる漢字によって、さまざまな意味を込めることができるのも魅力的ですね!
実在の人物名をもじる
これも常套手段のひとつ、歴史上の人物や有名人等々、実在する人の名前をもじったネーミング法です。
どちらかというと、コメディやマンガなどでよく使われる手法のようなイメージがありますね。
ですがちょっと固めの作品でも、明らかに元ネタがわかる立派な名前にコンプレックスを感じていたり、名前負けを恥ずかしく感じていたりといった、キャラクター造形に影響を与えるという使い方もあります。
せっかく有名人の名前をもじるのでしたら、命名に至る理由や願いなど、細かい設定まで作り込みたいものですね。
あえて古風な和名を使う
名前のインパクト、という意味では現代を舞台にした作品であえて古風な和名をつけるのもひとつの手ですね。
いまでも歌舞伎役者や伝統工芸士、あるいは老舗の当主など、代々の古い名を継承している例がありますが、一般人がそういう名前だととても印象に残りますね。
「〇〇十郎」や「〇〇之介」などはまだあるとして、「〇〇右衛門」や「〇〇之進」はたまた「〇之丞」などは古風なイメージです。
女性だと時代での違いがわかりにくいですが、古来の愛称である「お花」なら「於花」、または現代にもありますが「志乃」「月乃」など、「〇〇乃」とつくのも奥ゆかしい感じがしますね。
キャラクターには何らかの意味があってそういう名前が付いている、という設定があれば、ドラマに奥行きを持たせやすくなるというメリットもありますね!
日本語の”自由度”を、最大限に楽しもう!
日本語表記は漢字・ひらがな・カタカナとそれぞれに味があり、外来語を容易に音で写すことができるという強みがあります。
しかも、漢字であれば一字そのものに意味を持たせることができ、名前ひとつをとっても重層的な願いを込めることができます。
そんな日本語の"自由度"を最大限に活用し、楽しくこだわりをもってキャラクターに名前をつけてみましょう!
三條 すずしろ・記
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