子供のころ、毎年たけのこ掘りをしていた
わたしが18歳まで育ったのは、携帯の電波も届かないような山奥の村でした。
山菜がたくさんとれて、今思い返すとよかったなあ、と懐かしく感じてしまいます。
春に楽しみにしていた恵みのひとつが、「たけのこ」でした。
植林のスギ林を竹藪が侵食していくので、それを食い止める意味もあって一生懸命掘ったものです。
孟宗竹がほとんどで、地面に埋まったままの朝堀りみたいな上品なものではなく、割と大きくなったものも掘りましたがそれはそれはおいしいものでした。
小説『伊緒さんのお嫁ご飯』にも「たけのこご飯」の回がありますが、新鮮なたけのこって本当にどんな料理にも化けてくれます。
鮮度が大事!糠と煮てアクを抜く
田舎でたけのこを掘ったら、大釜を焚火にかけてたくさんのお湯を沸かし、糠と鷹の爪と一緒にグラグラ煮たてました。たけのこのアクの正体は「シュウ酸」というガラス質の一種で、糠がこのシュウ酸を吸着してくれるそうです。
たけのこにはあらかじめ、包丁で縦に切れ目をいれておきます。
湯であがったら切れ目から割くように皮をはがし、節の部分に残った甘皮は、皮の一枚をスクレーパー代わりにしてこそげ落としました。
あとはどう料理したっておいしいのですが、わたしが好きだったのは鰹のアラと一緒に炊きつけたものでした。
「土佐煮」という料理もあるように、たけのこと鰹ってほんとうに相性がいいんですよね。
そしてやっぱり、「たけのこご飯」は一番の楽しみでした。
たけのこの煮物を転用、雑穀米で炊き込みご飯に
久々に掘りたてたけのこを頂き、さっそく煮物でいただきました。
写真のたけのこご飯は家族の作品で、余ったたけのこ煮を転用し、雑穀米での炊き込みご飯にしてくれました。
十分に味の染みたたけのこは、それでも新鮮な香りを失わず、雑穀のぷちぷちした食感と相まってとっても楽しい料理になりました。
小説のエピソードのように、春を堪能する一皿でした!
三條すずしろ・記
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