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おすすめ漫画 『蟲師』 漆原友紀

おすすめ作品紹介
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漂泊のまれびと、蟲師ギンコの物語

今回は私の大好きな漫画作品、漆原友紀さんの『蟲師』をご紹介します。

まるで妖怪や精霊のような「蟲」と呼ばれる不思議な生命と、それらへの対処を専門とする「蟲師」という漂泊の職能者を題材にした物語です。

物語のなかで「蟲」は、れっきとした実在する生命なのですが、私たちとは少しベクトルの違う存在で誰にでも見えるわけではありません。
蟲師とは、そういったものを認識する能力のある人たちなのです。
蟲は動物のような姿のものや昆虫のようなもの、あるいは植物や無機物などさまざまな姿態のものが存在しています。
それぞれの性質や特性から、時に人に害や大きな影響を与えることがあり、そういった蟲由来の事件や事故を扱うのが蟲師たちの仕事です。

主人公は白髪隻眼の青年蟲師・ギンコ。
彼は蟲を寄せる体質のため、常に蟲除けの煙草をふかして一所に留まることができません。
漂泊しながら、旅先で出会った蟲にかかわる事件を、医師や研究者のような姿勢で解決していくのです。

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ノスタルジックな、近世と近代のあわい

物語の時代背景は明言されていませんが、近代に入りつつある世の中の農村・漁村部をイメージさせます。
主人公のギンコは洋装ですが、ほかの登場人物はほとんどが着物を身に着けています。
どこか懐かしいような里山の原風景と、カラーページは日本画を彷彿とさせる淡く幻想的な色合いで描かれています。

また、特に「山」が重要なキーワードとして存在し、自然の脅威を象徴する異界として位置付けられています。
実にフォークロリックな世界観は、黎明期の民俗学者が深山幽谷に分け入っていくかのような雰囲気をもっています。

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秀逸なネーミングと、センスあふれるサブタイトル

『蟲師』に大きな魅力を感じる点のひとつに、それぞれの蟲につけられた名前の秀逸さがあります。
たとえば、

夢野間(いめののあわい)
空吹(うそぶき)
天辺草(てんぺんぐさ)
核喰虫(さねくいむし)
雲喰み(くもはみ)

などがわたしのお気に入りで、読みと当て字のバランスが絶妙で、たいへん印象深いネーミングとなっています。
また、サブタイトルも

綿胞子(わたぼうし)
硯に棲む白(すずりにすむしろ)
虚繭取り(うろまゆとり)
天辺の糸(てんぺんのいと)
野末の宴(のずえのうたげ)

等々、どことなくしっとりとした冷感のある言葉が選ばれています。
民俗の仄暗さと、異界と俗界の狭間を感じさせる独特のセンスだと思います。

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旅する者と定住する者との対比

蟲師の世界では、旅を続けるギンコの視点からほとんどのキャラクターが一期一会の人たちです。
その多くは村に住み、農業や狩猟・漁労に従事する「定住者」たちとなっています。
彼らにとっては旅の蟲師はいわゆる「まれびと」であり、新しい知識や遠い土地の話題を運んでくれる存在でもあるのです。
その体質から、たとえ望んでも決して定住者になれないギンコと、そんな生き方にある種の羨望のまなざしを向ける人たちとの対比もまた大きなテーマとなっています。

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お気に入りキャラ「狩房探幽」

最後に、『蟲師』においてわたしが最も好きなキャラクターをご紹介します。
その名は「狩房探幽(かりぶさたんゆう)」。
雅号のようですが、うら若い女性です。

彼女は、かつてこの世を滅ぼす力を持った蟲を自身に封印した蟲師の末裔で、その身には代々受け継いだ「禁種の蟲」が封じられています。
身体の一部が墨色で、その部分は動かすことができず、生まれながらに不自由な生活を強いられてきました。
彼女は「蟲を屠った話」を念じると、体に封じられた蟲が文字となって紙に写されていきます。
「筆記者」と呼ばれる狩房家の能力者は、代々そのようにして禁種の蟲を封印してきたのです。
筆記にはたいへんな苦痛を伴うのですが、探幽はどこか飄々として、達観しながらも前向きな希望を捨てません。

数少ないレギュラーでありながら、その登場頻度も決して多くはありませんが、キセルを片手にくつろぐショートカットの探幽は、深く心に残った大好きなキャラクターです。

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