刀の鞘の重要部品、「栗形(くりかた)」とは?ずり落ち防止や下緒を通す機能を解説!
小説
第7膳 ねこまんまは人間用でお願いします!子ニャーが家にやってきた
最近伊緒さんの様子がなんかおかしい。 一日に何度か、ちょこちょことお家の外に出ていくのだけど、その出方がすごくあやしい。 まずはキョロキョロと辺りの様子をうかがい、危険がないかとか敵がいないかとかをよおく確認する。 そして廊下の角から角へと「ささささささっ」と忍び足で移動する。 いや、しているつもりなのだけど、実際には「てけてけてけてけ」とヘンな音がするのでいやでもぼくの耳に届いてくる。 伊緒さんはそんなに運動が………………~続きを読む~
第8膳 美女と天ぷらとオトナの男。でもちょっと勘違いしてたかも
これでもぼくなりの「オトナの男像」みたいなものがあって、いまだにちくちくとその影響を受け続けている。 あれはいくつのときだったか、子どもの頃にテレビで観たグルメ番組がその原風景のひとつなのだ。 いまとなってはもう誰だか分からないけど、勝新太郎と谷崎潤一郎を足して2で割ったような、「ただしい旦那様」がさまざまな料理屋さんを訪れる番組だった。 その恰幅のよさとどこでも平等に尊大な立ち居振る舞いは、思わず「ははあ」と思………………~続きを読む~
第9膳 今日のお寿司は回りません!東と西でこんなに違いがあるのです
「……はい。承知しました。ええ、それでは納品までお待ちください」 自信たっぷりに言い放ったものの、わたしは電話を切った瞬間、大きくため息をついてしまいました。 さて、困ったことになったぞ。 なにが困ったことになったかというと、わたしがお家で受けているライティングのお仕事のお題についてです。 大好きな歴史関係のトピックを中心に書いていますが、もちろんすべてが得意分野というわけではありません。 でも、わたしのようなフリ………………~続きを読む~
第10膳 夏の涼味のわらび餅!石焼き芋とよく似たリズムで売りにきますよ
先日伊緒さんが保護した茶トラの子ニャーは、「コロ」と名付けられた。 これはぼくが子どもの頃にこのお家にいた、同じく茶トラネコの名前を襲名した形になる。 つまりは「二代目・コロ」なのだけど、この子ニャーがまたとんでもなくやんちゃだった。 「にー!」と鳴いてはだだっ、と走っていってカーテンのひらひらにかじりつく。 「ににー!」と鳴いてはがしがしがし、と網戸のいちばん上までクライミングする。 そしてコロが何かいたずらす………………~続きを読む~
第11膳 おばあちゃんのレシピ帳。少女時代の伊緒さんと、お料理の先生
ねえ、おばあちゃん。
塩少々ってどんくらいだべか。
こんなぺっこだら、味しないしょー?
幼いころのわたしは"塩少々"のことを文字通り、ほんのすこしだけという意味だと信じこんでいました。 どのお料理のレシピを見聞きしても、かならずどこかに"塩少々"とあるのがふしぎでたまらず、それでは味がしないはずだとおもったのです。 「"少々"ってのは、"ちょうどいい量"って意味だよう」 祖母はいつも………………~続きを読む~
第12膳 お餅のかたちは丸?四角?餅好きはお正月以外も食べたいものです
伊緒さんの大好きなもののひとつに、「お餅」がある。 そう、お正月に集中的に食される、白くてもっちりしたあれだ。 ふだんはそんなにたくさん食べられるほうではないのに、お餅だけは別腹が発動するらしい。 あの小さなからだのどこにそんなに入るんだろうと、いつも不思議で仕方ない。 お餅の形が東西で異なるのは有名なお話で、やっぱり関ヶ原のあたりがだいたいの境界線だという。 関西に越してきて伊緒さんが喜んだことのひとつに、"お………………~続きを読む~
第13膳 さあさあ、みんなでジンギスカン!里帰りと伊緒さんのお母さん
ついひと昔前まで、北海道へ旅するにはフェリーが最も安い足だった。 いまでこそ格安の航空会社がさかんに利用されるようになったけれど、旅人にとって船は長きに渡り移動手段の王だったのだ。 伊緒さんと知り合った頃はLCCが登場する直前で、まだフェリー華やかなりし時代の名残りを留めていた。 たとえば関西からなら京都の舞鶴港から小樽まで。 関東からなら茨城の大洗港から苫小牧まで。 それぞれおよそ20時間の船旅だ。 そう説明す………………~続きを読む~
第14膳 伊緒さんのラーメン食べ比べ。札幌vs和歌山のご当地対決です
道産子がラーメンにうるさいというのは、ご存じのとおりかと思います。 どういうわけか北海道はラーメンどころでもあり、観光地には必ずといっていいほど「なんとか横丁」とか「かんとか道場」みたいなラーメン屋さんの集中地帯があるのです。 わたしは札幌で生まれ育ちましたので、みそ味のこってりスープに太いちぢれ麺の"サッポロラーメン"になれしたしんできました。 なぜこのようなスタイルができあがったのかについては諸説ありますが、………………~続きを読む~
第15膳 ”ピッツァ”は”ピザ”のオサレな言い方…ではないんですって?
伊緒さんにはまるで双子のようにそっくりな、「瑠依さん」という従姉妹がいる。 この人のことを伊緒さんはとても慕っていて、姉妹のように仲良しな様子は見ていてとってもほほえましい。 でも姿かたちはよく似ているものの二人のキャラクターは全然違って、伊緒さんが「明るい天然」とすると瑠依さんは「クールな天然」といえるだろう。 あまり表情を変えることもなく、切れ長の目に縁なしめがねをかけた瑠依さんの風貌は怜悧そのものなのだけど………………~続きを読む~
第16膳 西のうどんに東のお蕎麦。でも蕎麦ってハードル高くないですか?
わたしにとって関西の食べ物はめずらしく、またとってもおいしいものばかりでした。 よく東北地方は味付けが濃い目で、関西の料理は薄くて物足りなく感じる、などといわれます。 わたしも当初はそのあっさり加減に少し面くらいましたが、なれてくるにしたがって、単なる薄味というわけではないことがわかるようになってきました。 しっかりとお出汁をひいて旨みを凝縮し、素材そのものの味を引き出す知恵はさすがの歴史を感じさせます。 おいし………………~続きを読む~
第17膳 まさか自宅で缶詰バーとは!じつは子ニャーも常連さんです
すごくたくさんの缶詰をもらった。 会社あてに届けられるお中元を社員みんなに分けるというビンゴ大会で、みごとに缶詰だけを大量に引き当ててしまった。 多すぎるので同僚や上司に一部バーターをもちかけたけれど、面白がって誰も応じてくれなかった。 しかし今日び、こんなに保存食をいただくというのもまったくありがたい。 多謝多謝。 袋に分けて、通勤カバンにも詰め込んで、えっちらおっちらお家まで運んだものだが、本来なら一気に持ち………………~続きを読む~
第18膳 大和名物「柿の葉寿司」!鯖寿司を、柿の葉っぱでくるんでみたよ
ぜんたい、当たり前のようにそこにあるものには、なかなか有り難みを感じられなくなるものらしい。 空気も水も、無いと命に関わるものなのに、普段はほとんど意識することもないのではないか。 ぜいたくな話とは思うけど、ぼくにとってそういうもののひとつに「柿」がある。 そう、学名を"kaki"という、日本の里山原風景に溶け込んだあの赤い果実のことだ。 ぼくのふるさとである和歌山は、なにを隠そう柿の生産量は日本一。 和歌山とい………………~続きを読む~
第19膳 給食メニューは何が好き?……って、ええ!そんなの出たんですか
お家の近くにスーパー銭湯があって、時おり伊緒さんと浸かりにいくのを楽しみにしている。 どういうわけか銭湯では風呂上がりに必ず牛乳を飲みたくなって、それがひそかな喜びともなっている。 そこの牛乳は昔ながらの瓶詰めで、プラスチックのキャップではなくってレトロな紙製のフタが付いているのだ。 こんなものがよくまだあったな、と嬉しくなって、ついつい童心にかえってしまう。 牛乳瓶の紙のフタは、千枚通しみたいな針を突き刺して取………………~続きを読む~
第20膳 やっぱり〆にはお米でしょう!タラコのせたり、たまごかけたり
この世でいちばんおいしいものは何か? 人類史はじまって以来のそんな問いに、あまたの聖人賢者たちが心を砕いてまいりました。 その答えにはさまざまなものがありますが、わたしが大好きなエピソードを二つご紹介したいと思います。 一つ目はかの"東照大権現"、徳川家康にまつわるお話です。 あるとき家康さんは居並ぶ家臣と戦談義をしていましたが、唐突に「この世でいちばんうまいものは何だと思う?」という問いを発します。 剛勇無双の………………~続きを読む~
【WEB小説】『伊緒さんのお嫁ご飯』 ―目次―
貴女がいるから、まっすぐ家に帰ります――。
伊緒さんが作ってくれる、おいしい「お嫁ご飯」が楽しみな僕。子供のころから憧れていた小さな幸せに、ほっと心が癒されていきます。
ちょっぴり歴女な伊緒さんの、とっても温かい料理のお話。
「第1回ライト文芸大賞」大賞候補作品。「エブリスタ」「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です!
目次
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第一椀 伊緒さんのカレーはどういうわけか、初日から二日寝かせた味がする
今日の晩ごはんはなんだろうなあ、と、楽しみにしながら帰るなんて子どもの頃には考えられないことだった。 両親はバリバリの共働きだったし、低学年からずっと塾通いだったので、家族で食卓を囲んだ記憶はほとんどない。 夕食はコンビニ弁当か、母が作り置きしてくれた簡単なおかずとおにぎりを、塾で食べるのが普通だった。 自分の周りの子どもたちは皆同じような感じだったので、特段それが変だと思ったことはなかった。 でも、塾へ………………~続きを読む~
第二椀 「君の味噌汁を毎日飲みたい」と言われても、実はすごくたいへんなのでは
伊緒さんにどういう感じでプロポーズしたのか、実はほとんど覚えていない。 その前後の記憶があいまいな理由はまあ、おいおいお話しするとして、何やらしきりに「味噌汁」のことを言っていたのだという。 「君の味噌汁を毎日飲みたい」 というプロポーズの文句は、もはや無形文化財ともいえるほど伝統的かつレトロなもので、この封建的なセリフが僕は大嫌いだった。 考えてもみれば、これは家庭に入った女性が食事を支度して、しかも味噌汁とい………………~続きを読む~
第三椀 伊緒さんのハンバーグは子どもはおろか、大人だって小躍りして喜ぶのだ
およそ「子どもが喜ぶ」といわれるメニューには洋食が多い。 カレー、スパゲティ、オムライス、エビフライ等々、どれも食べやすくて味付けもきっぱりと分かりやすく、何よりそこはかとない華やぎのようなものがある。 子どもの頃の僕は、こういったメニューに喜んでみせることを、とても恥ずかしいことだと思っていた。 子どもだからエビフライが好きだろう、オムライスがいいんじゃないか、とたまに会う親戚の大人たちが気遣ってくれたりするの………………~続きを読む~
第四椀 「副菜」と呼ばれる小鉢には、伊緒さんの愛があふれていました
「これ、ものすごくおいしいです」 僕はそう言って、しげしげと箸でつまんだ緑の野菜を観察した。 「そう、よかった」 伊緒さんがいつものとおり、テーブルの向かいでにっこり笑う。 ほうれん草よりもうちょっと無骨で、なんとなくとっつきにくい様子の葉物野菜。 栄養は満点だが、やや人付き合いが苦手で、そうやすやすとは他の料理に参画してくれない。 比較して申し訳ないけど、たとえばほうれん草だったらおひたしでもバター炒めでも、お味………………~続きを読む~
第五椀 「レバーの唐揚げ」。敬遠していたレバーが、大好物になりました
食べものの好き嫌い、というのは少ない方だと思うのだけど、レバーはどうにも得意ではなかった。 肉ともホルモンともつかない不思議な食感で、噛めば噛むほどもっちゃりと口中の水分を奪われる感じが好きになれなかった。 しかも、調理がまずいと生臭さがツンと鼻に抜けて、もう食欲をなくしてしまう。 僕だけじゃなくて、レバーが苦手だという人は結構多いんじゃないかと思う。 でも・・・。
「わあ、今夜は鶏の唐揚げですか!」 目の………………~続きを読む~