小説で、「誰のセリフかわからない」ことがある
小説で登場人物が直接発言する「セリフ」。
とっても大事な部分であり、また執筆していても楽しいパートではないでしょうか。
しかし一対一の会話ならまだしも、複数人が同時に議論をするなどのシーンでは、誰が誰にしゃべっているのか分からなくなることがないでしょうか。
作家さんごとにさまざまな工夫をされていますが、ここに基本的なセリフ書き分けのテクニックを5つまとめてみました。
自身のための振り返りでもありますが、なにかの参考にしていただければ幸いです!
一人称を変える
もっとも基本的なテクニックが、「一人称での区別」ではないでしょうか。
おおむね、のことではありますが一人称には結構な属人性が含まれており、その区別で性差やキャラ付けを表現することも可能です。
たとえば「ぼく」なら幼い男の子、「オレ」ならちょっとヤンチャな感じ。
「わたくし」とかだと品のある印象ですし、「あたし」なら元気な女の子、といったイメージでしょうか。
登場人物それぞれの個性に合った一人称を使わせることで、「誰がしゃべっているか」ということが意識しやすくなりますね。
口調に特徴をもたせる
特徴的な語尾や、印象的な口ぐせを設定するとさらにセリフの属人性がアップしますね。
「~なのかあ」とまったりした感じや、「~なんだよっ」と勢いのある口調などが思い浮かびます。
でも「~なんだヌン」とか「~だったプリ!」とか、やりすぎるとギャグになるので作品の雰囲気とキャラの設定次第で調節しましょう。
おすすめは、「方言」を使わせることです。
関西弁のキャラが一人いると、会話にもテンポが出てしかも特徴的なのでとってもおすすめ。
ただし、キャラ全員が関西人だとそれはまた別のお話です(笑)
セリフの字面で印象を変える
小説の文字情報という特性を活かして、「字面(じづら)」で印象を変えるのも効果的です。
たとえば、セリフにひらがなを多めにすると幼くやわらかい雰囲気に。
漢字や熟語を多くすると硬質で知的なイメージになります。
「たいへんだ!」
というのと、
「大変だ!」
というのとでは、なんとなく緊迫感が違いますね。
私の作品『伊緒さんのお嫁ご飯』の主人公・伊緒さんのセリフはひらがながおおめになっているのでした。
キャラに次の話者へ呼びかけさせる
複数人がしゃべるセリフパートだと、誰しもが言いそうな言葉では誰が話しているのか分からなくなりがちです。
そこで、現状しゃべっているキャラに、次の話者を指定してもらうという方法がよくとられます。
「A子、どう思う?」
「聞いてんのかよ、B太郎」
などとすれば、必然的に次の話者がわかりますね。
これなら「ああ」とか「うん」とかの生返事でも、誰が言ったか明白です(笑)
地の文の挿入で話者を識別する
延々セリフパートを続ける、という技法ももちろんあるのですが、適度に地の文を挿入するのも効果的ではないでしょうか。
地の文であれば誰が何を言って何をしたか、客観的に描写することができるので「場」の表現も可能です。
テンポを大事にしたいというシーンもあるでしょうから、一概に必要とは限りませんが、単調になることを避けるのにも便利なテクニックではないかと思います。
ライト系ジャンルなら、セリフの自由度も高い!
一般文芸ではかつて「!」や「?」はなるべく使わないのがよしとされていたイメージがあります。
しかし、小説ジャンルの多様化に伴い、表現方法もより自由度が増しているのではないでしょうか。
こうでなくてはいけない、ということはないと思うので、わかりやすく楽しい表現をどんどん研究していきたいものですね!
三條 すずしろ・記
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