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suzushiro15

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第三十九椀 土曜のお昼の「ソース焼きそば」。かつて土曜は半ドンでした

 "半ドン"という言葉が通じるのは、もしかしてぼくたちの世代が最後なのかもしれない―――。 そう思ったのは会社に数年振りに新卒の人たちが入社してきて、研修の一部をぼくが担当したことに由来する。 「まあ、比較的年齢が近いだろう」くらいの理由で白羽の矢が立ったのだけど、どうしてなかなか、世代の違いを感じざるを得ない。 イチバンの要素はやっぱり言葉だ。 彼ら彼女らの言っていることが分からないのではなくて、こちらが使う言葉………………~続きを読む~
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第四十椀 デミ香る「ハヤシライス」。洋食界の裏ボスはこれできまり

 世の中にはよく似てるけど実はぜんぜん違う、というものが結構あるようだ。 たとえば、 「チーター」と「ヒョウ」「りんご」と「なし」「ゼロ戦」と「隼」  などがパッと思い付いた。 最後のはもちろん、歴史的にも有名な航空機なのだけど伊緒さんいわく、 「ゼロは海軍、隼は陸軍の戦闘機よ。よく似てるうえにエンジンも同じだったそうだから、混同してしまいそうね。そもそも両者の設計思想の違いは(以下略)」 だ、そうだ。………………~続きを読む~
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箸休め おみやげに「苺のタルト」。伊緒さんが喜ぶとぼくも喜びます

 ここに酔っぱらって帰宅するサラリーマンがいたとします。 おそらく接待か何かだったのでしょう。 一応はお仕事の範疇であり、気は遣ったのでしょうが悪いお酒ではなかったようです。 その証拠に、千鳥足ながらも実に機嫌よく、歌なんか口ずさんじゃったりしています。 歳の頃は40代後半、お家にはあまり会話もなくなってしまった奥さんと、難しい年頃の娘さんがいます。 しかし彼の足取りはあくまで軽いのです。 誠心誠意の接待が功を奏し………………~続きを読む~
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第四十一椀 脇役じゃないよ「香の物」。真のおかずにしてご飯の盟友です

 小さな小さなお皿に、ちんまりと盛られて出てくるお漬物。 定食のお膳にも必ず付いているけど、ある種のお料理とふさわしいペアを組んで登場することもしばしばだ。 お蕎麦には野沢菜漬け、うなぎには奈良漬け、海苔巻きには生姜の甘酢漬けなんかがぴったりだし、カレーにらっきょうや福神漬けも範疇に入るだろう。 そんなお漬物のことを、「香の物」というお洒落な名前で呼ぶことはよく知られている。 「お新香」とか「おこうこ」なんかもこれ………………~続きを読む~
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第四十二椀 揚がれ!「とんかつ」。おかずの王よ。この火加減は勝負です

 さあ、揚げるわよ。  ようございますね。  ようございますね。  では。  入ります。  長い黒髪を後ろできりりと引き結び、真っ白な割烹着に身を包んだ伊緒さんが油鍋と対峙している。 祓えに臨む神職のようにも、はたまた立合いに赴く剣士のようにも見えるその佇まい。 おいそれと声をかけるのもはばかられるほど、真剣そのものの気魄に満ちている。 この状態の伊緒さんを、ぼくは「真の本当の本気」と………………~続きを読む~
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第四十三椀 うれしはずかし愛妻弁当。人生の先輩が語る結婚生活の極意とは?

 会社では外回りに出ることも多く、お昼ごはんはほとんど外で食べている。 とは言っても、いつも決まった時間に食べられるとは限らないし、節約のためにもついつい簡単に済ませてしまうことが多い。 ランチは働く者にとって大きな楽しみであり、お昼時ともなればどのお店も勤め人でいっぱいになる。 定食や丼もののチェーン店からファーストフード店はもちろん、夜がメインの料理屋さんでも日替わりランチなんかを用意していて、安くておいしいも………………~続きを読む~
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第四十四椀 春らんまんの「たけのこご飯」。伊緒さんの故郷に筍はなし?

 たけのこが好きだ。 これはぼくが子どもの頃からの一貫した好物で、どんな状態のものを見てもノスタルジーを感じてしまう。 八百屋さんにごろん、と陳列されているもの。 竹やぶからにょっきり野放図に生えてきたもの。 ラーメンにメンマの状態でちょこんと乗っかっているもの。 どれもこれも実にステキだ。 まずもって形がかわいい。 幾重にも着物を羽織ったような不思議な皮の感じがおもしろく、藪でぴょこんと顔を出しているのを見つける………………~続きを読む~
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第四十五椀 最強の甘味「クリームあんみつ」。これはつまりフルアーマーです

 和菓子には欠かすことのできない「あんこ」。 ご存じのとおり、炊いたあずきなどをお砂糖や水飴と練り合わせたものだ。 これがなきゃできないお菓子がたくさんあるという、とっても重要な加工品で、ぼくも伊緒さんも大好きな甘みだ。 海外の人に 「アンコってなんだい」 と聞かれたとき、とっさに  「豆のジャムかなあ」 と回答したけどだいたい合っていると思う。 あずきだけではなくて、赤インゲンや白インゲン、エンドウ豆なんかもよく………………~続きを読む~
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箸休め 「2人で焼き肉行くと本物の恋人」。関西の古い言い伝えです

 わたしが内地(本州)で暮らすようになって悲しかったこと。  "ザンギ"が通じなかったこと。  カップ焼きそばにスープがついていないこと。  スーパーにジンギスカンが売っていないこと。   ほかにも細かいことはいろいろとありましたけど、この3点については本当に悲しく思ったものでした。 ザンギについては外ではなるべく"からあげ"というようにして、ひとりのときにザンギザンギと唱えていました。 カップ焼………………~続きを読む~
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第四十六椀 ちょっと太った!「酢の物」導入で緊急対策。でも運動も大事です

 ある日緊急招集がかけられ、ぼくと伊緒さんの全人格が一堂に会するという、非常事態が発生した。 「みなさん、よくお集まりくださいました。これより秋山晃平・伊緒両名による全人格会議を開催します。本日の議題は、こちらです」 議長役の伊緒Aさんが合図をすると、ばばーん、と前方のスクリーンにふたつのグラフが映し出された。 片方はぼくの、もう片方は伊緒さんに関わる数値が記されている。 なにかというと、それは「体重」。 ぼ………………~続きを読む~