刀の柄って、どんな風になっているでしょう
みんな大好き日本刀。
最近では女性にもファンが増え、伝統ある刀剣の文化が再評価されていますね。
漫画やアニメなどのメディア作品でも、刀が重要なアイテムとして登場するものは多く、日本人にとってやはり特別な器物であることを感じます。
そんな刀ですが、片刃で反りがあって柄に菱形の模様がある……と漠然とした形はイメージできるものの、まじまじと近くで観察する機会はなかなかないのが現実です。
博物館などで刀身を見られるチャンスは増えましたが、鞘などの外装はガラスケース越しで細部がよくわからない、という声を耳にすることがあります。
そこで今回は、日本刀の「柄(つか)」にフォーカスしてその細部を確認する資料にしていただければと思います。
造りには実にさまざまなものがあるため、あくまで一例としてご覧くだされば幸いです。
それでは、じっくり観察してみましょう!
刀の柄
これが刀の柄です。
イメージ通り、菱形の模様が出るように糸が巻いてありますね。
柄の芯は木製で、鞘にも使われる「朴(ほお)」という木を用いています。
朴は油脂が少なく粘り強く、しかも軽くて加工もしやすいので日本刀の外装にうってつけです。
木製の芯の上に「鮫皮」と呼ばれるエイの一種の皮を貼り、その上から柄糸を巻いて仕上げます。
糸は木綿や絹など、巻き方も実に多くのバリエーションがあります。
柄の裏表には「目貫」と呼ばれる飾り金具を取り付け、装飾以外にも手がかりの良さなどの効果をもたらすといいます。
中の白い粒々が鮫皮です。
ワサビおろしなんかに使われているのを見かけますね。
巻き方は「諸撮巻(もろつまみまき)」という方法で、他にも多種多様な柄巻があります。
柄の両端にある金具
柄の鍔元寄り、刃に近い側には「縁(ふち)」、握りの先端には「頭(かしら)」と呼ばれる金具が取り付けられています。
縁は柄糸の巻き始めを守り、頭は最後に柄糸を結束しています。
もちろんさまざまな装飾が施される箇所でもあります。
鍔元寄りの黒い金具が「縁」。
写真の物は装飾なしのシンプルなタイプ。
構造は薄いカバー状で、柄の芯である白木に被せるようになっています。
握りの端に取り付けられた金具が「頭」。
これは「差し表」、つまり刀を腰に差した時に外側を向く位置の結び。
こちらは上記の反対側、「差し裏」の結び。
結び目の違いがおわかりでしょうか?
柄の頭は糸の結束や防護のためだけではありません。
剣術や居合術には「柄当て」といって、この部分で突いたり柄全体で打撃する技があります。
つまり柄頭は武器の一部でもあり、鋭く尖った形状のものも存在します。
柄頭の形状感。
これで強力な当身を行うこともあります。
刀身を柄に固定する、「目釘」
刀は刃から下にも「茎(茎)」という芯があり、これが柄に差し込まれる形になっています。
そして茎と柄には同じ位置に穴が開けられ、これに「目釘(めくぎ)」という芯をはめ込んで固定しています。
柄に差し込まれている茶色い部材が目釘。
竹製が多いようです。
刀が柄から抜けないよう固定するとても大切な部品で、居合道の演武や試合の際には必ず「各自目釘の点検を厳に」というアナウンスがされます。
鉄製やクジラの髭製のものもあったと聞いたことがありますが、実見したことはありません。
柄の表裏を彩る、「目貫」
日本刀の柄には、「目貫(めぬき)」と呼ばれる飾り金具が表裏に、段違いに取り付けられています。
かつては目釘と同様の機能がありましたが、やがて刀身を固定するものではなくなりました。
したがって、これは柄糸で巻かれることで固定されています。
動物や植物、人物や紋章等々さまざまなデザインがあり、美術品としても一ジャンルを築いています。
具体的な機能としては握ったときに指の掛かりがよくなる、といった説もありますが別の機会に検証したいと思います。
目貫。これは龍の姿。
動物意匠は頭が鍔の方を向くようにするという風習も。
柄の表裏に位置をずらして取り付けます。
柄には「紙」のクッションも。グリップは日本刀操作の土台
刀はもちろん刃がその本体といえるかもしれませんが、その性能をいかんなく発揮して遣い手の意思に応えるには、なんといっても「柄」が重要となります。
そんなグリップへの工夫から、柄にはクッションとなる素材がさらに追加されています。
それはなんと「和紙」。
「菱紙」や「込め紙」と呼ばれる三角形に折りたたんで圧縮した和紙を、柄巻に挟み込んでいるのです。
上記はこれまでの刀とは異なる柄巻のものですが、写真の赤い三角の内部に菱紙が仕込まれています。
菱紙によって柄糸がしっかりと巻かれ、グリップの凹凸もはっきりと出ます。
また、圧縮した和紙がクッションの役割も果たすとされ、刀の操作性を限りなく高めています。
細部にまで匠の技。刀の柄にもご注目!
いかがでしたでしょうか。
実に複雑で凝った構造の柄。
剣術でも居合術でも、日本刀を操作するためにはこの柄が正常に機能することが不可欠です。
繊細な手の内のコントロールを100%刀身に伝えるためにも、古来の匠や剣士たちは柄にも心を砕いてきました。
博物館や美術館で目にする機会があれば、刀身だけではなくぜひ、柄にも注目してみてくださいね!
帯刀 コロク・記
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