瀬比 亜零とは
プロ・アマ問わず、作家活動の場が飛躍的に広がった昨今、作品発表の媒体は電子版が大きな比重を占めるようになりました。
WEB上を中心に活躍する作家さんで、三條が尊敬してやまないお一人が「瀬比 亜零(せひ あれい)」先生です。
当初は「サラリーマン作家」の肩書で、同人誌活動からAmazon kindleに活動の場を移し、いまやおよそ40作という著作をもつ精力的な作家さんです。
関西をホームとし、ラジオ出演や講演活動などで多忙な瀬比さんは、いわば「プロのWEB作家」ともいえる新時代の作家の姿を体現した人であり、三條の目標とするところでもあります。
小説を書く楽しさを、全身全霊で味わうかのようなその作品の数々。
ここでは、うち5作をご紹介したいと思います!
『パラダイス』
あやしげな山道、あやしげな人々、あやしげな失踪事件……。
ぜんたいにあやしげな寒村でひそかに進行する、「パラダイス計画」のおぞましい実態とは……?
真面目な婦警と、鋭い観察眼をもったおちゃらけカメラマンのコンビが活躍する、「バディもの」としての楽しさも充分な、「瀬比 亜零」の名を広めた出世作にして、R-18指定必至の問題作。
わたしもこの作品で、初めて瀬比亜零の名を知りましたが、
「万人にはおすすめしないでネ」
とはご本人からのメッセージ。
『癒しの里の住人』シリーズ
バー「ロイヤルズ」に集う5人のメンバー。
彼らのもとには、今日も表の法では捌ききれない、さまざまな問題や悩みが持ちこまれる――。
現代版「仕掛け人」ともいえる、大人気の推理シリーズ。
時に荒事もありつつ、冷静沈着に悪事の根源を追い詰めていく様子は、まさしく「裏社会の頭脳戦」。
kindleでは海外での売上も好調な、痛快でどこかノスタルジックな物語です。
『沈みゆく男達』
瀬比亜零は推理だけではなく、コメディだって書けるんです。
神の気まぐれか悪魔のいたずらか、奇跡のような間の悪さに絡めとられた男たちを描いた短編集。
「軽い笑いだろう」ぐらいに侮っていてはたいへんなことになりますよ。
電車の中では読まないほうがいい、という注意書きを笑い飛ばして、通勤中に読んだ人がどうなったか、わたしは知っています。
『ちい子と閣下』
瀬比作品としては珍しい、太平洋戦争での史実をもとにした歴史小説。
沖縄戦の司令官だった「牛島満」中将と、ある看護学生との最後の心の交流を描いた物語。
教科書ではほとんど語られることのないエピソードに、平和への思いを新たにします。
こんな時代だからこそ、あえて読みたい一作。
わたしが一番好きな瀬比作品です。
『霊験』シリーズ
瀬比作品では、単著だけではなく他の作家さんとのコラボ企画にも積極的に取り組んでいます。
『霊験(れいげん)』は「吉田裕美(よしだゆみ)」先生とのタッグで人気を博しているシリーズで、ホラーだけどどこかしんみりと物哀しい、情感ある作品に仕上がっています。
ノスタルジックな怖気に、身を委ねてみるのもまた一興。
「瀬比 亜零」作品の魅力
瀬比作品を通していえるのは、その緩みない「テンポのよさ」です。
つい冗長になりがちな説明描写であっても、登場人物の巧みなセリフ回しで決して飽きさせることがありません。
また、一度に複数人の登場人物が会話するという、高難易度の技法をナチュラルに駆使しており、まるで映画やドラマといった映像作品を目にしているかのような臨場感が特徴です。
物書きとしての個人的な思いとしては、執筆という地道な作業を心から楽しみ、孤独に陥ることなく書き続けられる強い作家として、畏敬の念をもっています。
それでいて決して「孤高」ではなく、常に仲間の作家や後進への気遣いを忘れない、柔和で温かなお人柄でもあります。
大阪の出版社「C’S Factory」に所属されている瀬比先生には、わたしの初作『吠声』の出版でたいへんお世話になりました。
「藍より青く、どこまでも高くはばたいてほしい」
そう励ましてくれた言葉は、わたしにとって生涯の宝物となっています。
電子書籍の力、楽しさ、そして可能性を、存分に味わってみてください!
三條 すずしろ・記
↓C’S Factoryのページ
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