小説投稿サイトごとに、読者さんのリアクション傾向がある
小説投稿サイトも、とってもバラエティ豊かになりましたね。
WEB小説の牙城、といっても過言ではない数々の投稿サイト。
これを主な活動拠点としている作家さんも多いのではないでしょうか。
ほとんどが無料で読み書きできるサービスで構成されていて、独自の文学賞も開催されています。
また、人気作や運営の目に留まったものは紙の本として出版されることもあり、多くのWEB作家が「書籍化作家」としてデビューしています。
とても夢のあるシステムで、かつてに比べると作家デビューへのチャンスは格段に広がったといえるでしょう。
そんな群雄割拠の小説投稿サイトですが、一作を複数のサイトに登録している作家さんも多いことと思います。
私、三條すずしろも『伊緒さんのお嫁ご飯』を全部で3つのサイトに登録しており、それぞれにたくさんの方に読んでいただき、また温かなコメントを頂戴するなど本当にありがたい限りです。
基本的にはいずれも同様のサービスではありますが、サイトごとに特徴的なシステムをもっていることと、ユーザー層にも一定の傾向があるように感じています。
そこで、あくまで私個人の経験ですが、その特徴や傾向について感じたことを記したいと思います。
アルファポリス
サイトの特徴・特筆ポイント
老舗のひとつ、アルファポリス。
各ジャンルが細かく分かれ、カテゴリーごとの順位に加えて「24hポイント」という独自の数値が表示されます。
これは直近24時間で新規投稿をしたり、読まれたり、「お気に入り」に登録されることで加算されていきます。
合計1500ポイントを超えると「出版申請」を行うことができ、書籍化を検討してくれるという夢のあるシステムとなっています。
もちろん、「検討」であって確約ではないそうなのでその点にはご注意を。
読者側からの評価としては、「いいね」に該当するものがありません。
一作に一度の「お気に入り登録」か、ページを開いて読むことそのものがポイントとなります。
一定以上にたまったポイントは、おおむね1スコア=1円で換金することができます。
- Amazonギフト券・・・・100円分~
- iTunesギフト券・・・・・500円分~
- 楽天銀行振り込み・・・・1,000円分~
となっており、アルファポリス内で漫画やブラウザゲームに使える「アルファコイン」は50スコアで60円分を入手することができます。
読者さんのリアクション傾向
読み手側からは作品に対して「感想」を送ることができます。
ただし、これは作者の側が内容を「承認」することで公開され、ネタバレ防止のためにクリックして開かないと、中身が読めないように設定することも可能です。
作品公開中の意思表示は主にこの「感想」と「お気に入り登録」ですが、私の場合は連載終了・完結のタイミングで一気に感想をいただきました。
連載中には、ポイントとお気に入り以外には読者さんの反応がほとんど分からない状態でしたので、「毎日読んでいました」「仕事帰りに読むのを楽しみにしていました」などのコメントを頂いたときは本当に嬉しかったものです。
他の作家さんの作品ではそんなこともないかもしれませんが、私の場合はこのように、連載中ではなく完結した時点で、作品全体に対する感想をいただくというリアクションでした。
エブリスタ
サイトの特徴・特筆ポイント
かつて「ケータイ小説」と呼ばれた時代からの老舗サイトです。
2019年4月の大幅リニューアルで、従来のサイトシステムとは大きく異なりましたが、作品の「有料販売」ができる点が特徴的です。
エブリスタが主催する文学賞も多く、超短編の賞もあることから応募の間口が広いことも魅力です。
サイトリニューアルの前は、「1ページ1,000文字以内」というエディタの独自ルールがあり、たとえ1章分であっても文字数を超過すると分割登録する必要がありました。
私はそれも味のうちと思って愛用していましたが、リニューアル後には選択式となったようです。
さらに、読者からは1,000文字以内で構成された、各ページごとにコメントを送ることができる「ページコメント(通称“ペコメ ”)」という機能があり、リアルタイムかつピンポイントでの感想や意思表示が可能でした。
残念ながらこの機能はリニューアルの際に撤廃され、それまで蓄積されたペコメは引き継がれませんでした。
しかし、その後のリクエストやバージョンアップでペコメの復活が決定したそうです。
エブリスタの新たなページ構成に期待です。
読者さんのリアクション傾向
先述したペコメの影響からか、もっとも読者さんとの距離感を近く感じたのがエブリスタです。
ページごとにコメントを入れられるため、ピンポイントでの文章やネタについての話題がリアルタイムで展開されます。
よく読みにきてくださる方とは、まるで友達とメールでもしているかのような感覚でメッセージのやり取りができたのは、大きな励みでした。
作品への評価としては、一作に対して一日一個「スター」を送れるようになっています。
「いいね」に該当するもので、このスターが50・100・300・・・などと増えていくとトップページで紹介されるため、集客率が上がる仕組みになっています。
そんなにメッセージのやり取りをしていなくても、毎日欠かさずスターを送ってくださる読者さんがいたり、
「応援してもらってる!」
という実感を強く得られるサイトです。
カクヨム
サイトの特徴・特筆ポイント
あのKADOKAWAが小説投稿サイトに参入、ということでも話題になったカクヨム。
まだ歴史は新しいですが、かなり広い裾野をすでに開拓しています。
ほかのサイトでは作品紹介欄に表紙データやイラストが表示されるのが普通ですが、カクヨムでは文字のみに特化しています。
キャッチコピーにイメージカラーを使用できますが、自身で考案したコピーか、読者さんからのレビューコメントのタイトルが表示されるという仕組みです。
潔いくらいに「文字で勝負」というコンセプトを貫いているようです。
最大のメリットは、画面表示の「見やすさ」と感じています。
シンプルながら計算された文字組みで、容易にフォントも変えられるため、読むことにストレスをかんじさせにくくなっています。
書くためのエディタ画面も簡潔ゆえに使い勝手がよく、「書く」「読む」双方に配慮したサイトという印象です。
読者さんのリアクション傾向
各章へのハートマークの「応援」、そして星3つまでで行う「レビュー」が主なリアクションになります。
応援にプラスしてコメントを送ることができ、レビューは感想のみならずそれ自体が作品のCMになるよう設計されています。
PVが各章ごとに表示されるので、どれだけ読んでもらえたかが一目瞭然になるのも便利な点です。
読者さんには読み専の「ヨム」 さん 、作家としても活動しつつ読み手でもある人、というタイプが分かれていて相互におススメ作品の紹介が活発になされています。
作品とは別に「近況ノート」という、個人の連絡やメッセージを記せる欄があり、これをエッセイのように上手に使う人もいます。
また、「スコッパー」さんといって、名作を発掘して紹介する人たちもひとつのジャンルを形成しています。
登録作品が膨大なため、好みの物語になかなかたどり着けないという人にはありがたい取り組みです。
さまざまなテーマやジャンルごとに作品紹介を行っており、その文章がそのままひとつの作品になっているといっても過言ではありません。
スコッパーさんの紹介で人気が急上昇した作品も数知れず、私もおかげでPV数が急激に伸びたという経験があります。
どちらかというと、メッセージや感想のやり取りは「書き手同士」の交流になる印象をもっています。
作家どうしの、横のつながりが広がっていく可能性を感じさせるサイトです。
小説はいよいよ元気! 投稿サイトは今日も盛況
この他にもまだたくさんの小説投稿サイトがありますが、いずれも大変な盛況ぶりで日々ユーザーも増えているようです。
本が売れなくなっていっているとはいいますが、創作活動そのものはいよいよ元気になっていると感じないでしょうか。
商業出版では企画が通りにくいような挑戦的な作品や、100人ではなく1人のために書かれた作品なども、発表が容易な世の中になりました。
日々生み出される新たな物語の世界に浸れるのは、書き手として読み手として実に心躍る体験です。
それぞれの舞台で物語を用意してお待ちしていますので、ぜひ遊びにいらしてくださいね。
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