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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あかり先生の歴史講座 〜高野山のはなし〜

――はい!皆さんごぶさたしています! 久しぶりの授業なのですが、やっぱり教科書は使いません! さて今日は、高野山について少しお話しましょう。和歌山の皆さんにはもしかするととっても身近かもしれませんが、わたしのような遠く離れた土地の者から見ると、もうめちゃくちゃにエキゾチックなのですよ。 高野山の成り立ちなんかは、いまさらわたしが言わなくても皆さんよくご存じだと思います。そこで今回は、昔の高野僧団の………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あやかし文化財レポート・その5

今夜は特別オープンのbar暦に招待を受けている。 日数だけでいえばあれからそんなに経っているわけではないのに、めちゃくちゃ久しぶりな気がしてなにやら緊張してしまう。 普段は神社のカフェとして営業しているこのお店も、とっぷり日が暮れた後の姿は別の顔だ。 カリンコリンっとベルの音を立ててドアを押し開く。 「いらっしゃいませ」 涼やかな声音で迎えてくれるのは、ネクタイにウエストコートの女性バ………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あやかし文化財レポート・その4

「伊緒さん。スモークチキンのサンドイッチ、めちゃくちゃおいしかったです!」 不動山からの帰りがけ、cafe暦に寄ったわたしはまっさきにお弁当のお礼を言った。 「そう。よかった」 店長代理の伊緒さんはにっこり笑い、目の前でコーヒーをドリップしてくれた。 「マスターは元気かなあ」 伊緒さんが言うマスターとは、もちろんユラさんのこと。ユラさんが天野へ発つまでの間、お店の仕事の引き継ぎでレクチ………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第7章 不動山の巨石と一言主の約束。裏葛城修験の結界守

cafe暦の店長代理 ユラさんと天野へ行く少し前のこと。 cafe暦を閉めてほしくないばかりに、「ハローワークに求人出して腕のいい職人を探せ」と酔ってくだを巻いたわたしはけっこう責任を感じていた。 もちろんユラさん不在の間、マスターの代わりが務まる人を、ということだ。しかし、瀬乃神宮の結界守としての本質上、適格者は限られてくるのでおいそれと大々的な求人なんて出せるわけがない。 が、その辺りは………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あやかし文化財レポート・その3

里へと下りるバスを待つ間、わたしはまたあの太鼓橋の上にいた。 たった7日。でも、確実にわたしの人生を変えた7日。 言葉にして表すのが容易ではない様々な思いも、やがて自分の中で整理できる日が来るという確信がある。 後ろの気配に、やっぱりという思いで振り返ると、ちとせさんが初めて会ったときのようにスマホで自撮りをしている。でも、画面に写るその顔は、なにやら晴れやかだった。 「鏡はね、もうやめたの………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第6章 丹生都姫と八百比丘尼、裏天野の無陣流剣術

千鳥の盃 小糠雨があじさいを艶やかに濡らし、幾億もの水滴がその球に世界の形を映し出している。 樹々の間を縫って次から次に湧き立つ霧は白く清浄で、小さな龍に姿を変じてたゆたうかのようだ。 初夏とはいえ、雨に降り籠められたここは寒い。紀伊国一之宮、丹生都比売にうつひめ神社が鎮座する天野の里は。 小屋根の廂ひさしから無限に落下する雨垂れを、ただぼんやりと眺め続ける。その向こうには見事な半円を描いた………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あかり先生の歴史講座 〜隅田党武士団のこと〜

はい。みなさん、ごきげんよう!教科書は――そう、今日も使いません! さてさて、今回は北条時頼とともに紀ノ川の大鯰と戦った、“隅田党”のお話です。 和歌山県橋本市の東、奈良県五條市との境あたりにその名も“隅田”という地域があります。在地の武士団を育んだ土地で、氏神の隅田八幡神社は国宝の「人物画像鏡」を伝えたことでも有名ですね。この銅鏡は現在、東京国立博物館で展示されています。 この地を拠点とした“隅………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第4章 空海の大蛇封じと、裏高野の七口結界

裏高野 なんだか久しぶり、というよりはきっぱりとまだ2回目だ。「bar 暦」のカウンター席に着くのは。 なので白いシャツにネクタイ、そしてウエストコートというバーテンダー姿のユラさんを見るのも、これが2回目。まったくあたり前のことなのだけど、初めて彼女に会ったときのこの衣装への印象がすごく強くて、なんともいえない感慨のようなものを感じてしまう。 「あかり先生、なに飲まはる?」「うーん、何かさっぱり………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】幕間 あかり先生の歴史講座 〜陵山古墳・南紀重國のこと〜

はい。じゃあみなさん、教科書は閉じてくださいね! 今日は和歌山県橋本市の歴史に関わることを、2つ解説してみましょう。 まず1つめは「陵山みささぎやま古墳」。そう、庚申さんの使いのお猿さんと、たくさんの鬼たちが戦ったあの場所ですね。 円墳としては和歌山県下最大とされ、近畿地方でも出現期の横穴式石室をもつ、とーってもすごい遺跡です。 市の公式見解では5世紀末~6世紀はじめ頃の築造としていますけど………………~続きを読む~
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【紀伊 零神宮のあやかし文化財レポート】第3章 血縄の主の大鯰と、裏隅田一族の大宴会

cafe暦と二人の童子 和歌山に赴任してきた新米教師のわたしが住んでいるのは、県の最北東端あたりの町だ。 大阪府と奈良県に境を接するところで、橋本という古い町の南側、高野山の麓に開かれた小さな住宅地「伊都見台いとみだい」。この和歌山県北東地域の古名、「伊都郡」に因んだ名前だそうだ。 その山手側、ちょっと小高くなったところにゼロ神宮――、もとい「瀬乃神宮」が鎮座している。土地の子どもたちが瀬乃をゼロ………………~続きを読む~