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第二十二椀 絶技!「パラパラチャーハン」。家庭でもここまでできます

「お店の味」、というものが確かに存在する。 作る量だったりかけられる時間だったり、あるいは調理設備の問題だったりと要因はさまざまだけど、なかなか家庭では再現が難しい料理の数々だ。 でも、料理技術の発展や情報開示の進捗、そしてたゆまぬ創意工夫と研究の成果によって、限りなくプロの味に肉迫してきた家庭料理もある。 その最たるもののひとつが「チャーハン」であろう。 ぼくがまだ学生だった頃、何度目かの「料理ブーム」とも呼べる………………~続きを読む~
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第二十三椀 「きつねうどんとお稲荷さん」。伊緒さんと関西の味

 ありがたいことに半分物見遊山のような出張、というのが時たまある。 印刷関係のイベントとか、美術館の特別展とか、お仕事の役に立ちそうなことだったら、出勤扱いで行かせてくれるのだ。 もちろんほとんど自腹なのだけど、仕事柄もあって特別展のチケットなんか持たせてくれることもある。 そんな時はできる限り伊緒さんを誘って一緒に行くことにしている。 ぼくに甲斐性がなく、旅行らしい旅行にはまだご招待できていないことの罪滅ぼしもか………………~続きを読む~
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第二十四椀 ぷわぷわの「ホットケーキ」。子どもの頃の夢でした

 とっても久しぶりに、亡くなった母の夢をみた。 ぼくは小さい子どもの姿で、まだ昼過ぎなのに珍しく母が家にいる。 ホットケーキつくってあげようか、とこれまた珍しいことを言ってくれたのが嬉しくて、子どものぼくはわくわくと待っている。 台所にはいっしょうけんめいに粉を練っている母の後ろ姿が見える。 やがてバターが甘く焦げるしっとりした香りに誘われて、飼い猫のコロが母の足元にすり寄っていく。 できたよ、と、白くてまるいお皿………………~続きを読む~
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第二十五椀 安くておいしい「ポークすき焼き」。味付けは関西風で

 「すき焼き」といえば代表的な牛肉料理のひとつ、というイメージがあるけれど、本来はいろいろな肉でするものだったらしい。 豚肉とか鶏肉とか鴨肉とか、またはブリとかサバなんかの魚肉も使われたという。 東西の食肉文化の違いは概ね関東以北では豚肉を好み、関西方面では牛肉が珍重されることは以前にも触れた。 もちろんそれぞれの地域でどちらも使うのだけど、「すき焼きといえば豚肉」という土地もけっこうあるようだ。 伊緒さんの故郷で………………~続きを読む~
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箸休め 伊緒さんのお話。お食事デートですごく大切なこと

 ふう、やれやれ。 納品完了っと。 われながらいい記事が書けたわ。 晃くんが帰ってくるまでまだ間があるけど、はやめにご飯のしたくをしておこう。 きっとおなかぺこぺこにしてるだろうから。 わたしはあんなにおいしそうにご飯を食べる人を知らない。 わたしが作ったものを喜んで食べてくれるのもすごく嬉しいけれど、あの人は作り手の思いや苦心まできちんと味わってくれているんだと思う。 同じお料理でも、こまかな味付けの差や食材の切………………~続きを読む~
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第二十六椀 レトロな「手羽先チューリップ」。からあげ?ザンギ?の方言問題

 鶏のからあげが大好きで、一人暮らしのときにお弁当を買うとしたら、まずもってからあげ弁当を手に取っていた。 いろいろなお店や各コンビニによってちょっとずつ内容は違うのだけど、おおむね副菜は申し訳程度にしか入っていない。 なかには「ごはん、からあげ、以上」といった硬派で潔いからあげ弁当もあった。 いずれも味付けはしっかり過ぎるほどしっかりしていて、念入りにマヨネーズなんか添えられたりしていることもある。 若かったこと………………~続きを読む~
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第二十七椀 魚フライと「手作りタルタルソース」。なくてはならない名コンビ

「コレにはコレがなきゃダメだ!」 という組み合わせって結構あると思う。 食べものなら、カレーには福神漬けとからっきょうとか。 ラーメンにコショウ、うなぎに山椒。 牛丼に紅しょうが、お赤飯にゴマ塩。 コンビでいえばトムとジェリーとかボニーとクラウド、佐武と市とか太陽とシスコムーンとか、あっ、これはコンビじゃない(そして懐かしい)。 とにかくどっちか一方でもいけないことはないけれど、揃ってこその完全体という感じがする。………………~続きを読む~
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第二十八椀 新居初日の「麻婆豆腐」。伊緒さんの意外な趣味も明らかに

 いまぼくが伊緒さんと暮らしているオンボロアパートには、結婚を機に移ってきた。 ぼくにとっては、それまで住んでいたもっとオンボロなアパート("文化住宅"と書いてあった)に比べるとずいぶん新しくなったように感じられた。 けれど、伊緒さんからすればかなり古めかしい住処になってしまったはずだ。 でも彼女は嫌な素振りもみせずに、「レトロで楽しい」と言ってくれている。 さて、いざ引っ越しというときになって、あまりの荷物の多さ………………~続きを読む~
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第二十九椀 春の香りの「ふきのとう」。フキの葉の下には妖精がいます

「ああ、ありました!芽を出してる。かわいい!」 「こっちにも!よく見るとけっこうあるのね」 ふたりして大騒ぎしながら探しているのは、春の山菜の中でも一番はやく顔を出す「ふきのとう」だ。 淡くやわらかな黄緑色をして、地面からぴょこっと出てきた様子は芽キャベツが落っこちているかのようにも見える。 指先で摘み取った瞬間、春の息吹を凝縮したような強い香気が立ち上った。 この香りこそが、山菜の醍醐味だ。 前に伊緒さんに大根………………~続きを読む~
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第三十椀 花冷えの「スープカレー」。カレーとは違うのだよ、カレーとは

 日本はせまい、なんて誰が言い出したのかは知らないけれど、そんなの嘘だと思う。 北から南まで実にさまざまな民俗があって、関ヶ原を挟んでいまだに切り餅と丸餅がせめぎ合い、うどんのダシが濃いとか薄いとかで騒いだりしている。 すごくおもしろい。 そしてさらにおもしろいことは、異なる土地で育ったふたりが夫婦になったときに起こるのだ。 特に食文化の違いは決定的で、これをどうお互いに理解して歩み寄るか、というのが大きなテーマに………………~続きを読む~