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小説

第17膳 まさか自宅で缶詰バーとは!じつは子ニャーも常連さんです

 すごくたくさんの缶詰をもらった。 会社あてに届けられるお中元を社員みんなに分けるというビンゴ大会で、みごとに缶詰だけを大量に引き当ててしまった。 多すぎるので同僚や上司に一部バーターをもちかけたけれど、面白がって誰も応じてくれなかった。 しかし今日び、こんなに保存食をいただくというのもまったくありがたい。 多謝多謝。 袋に分けて、通勤カバンにも詰め込んで、えっちらおっちらお家まで運んだものだが、本来なら一気に持ち………………~続きを読む~
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第18膳 大和名物「柿の葉寿司」!鯖寿司を、柿の葉っぱでくるんでみたよ

 ぜんたい、当たり前のようにそこにあるものには、なかなか有り難みを感じられなくなるものらしい。 空気も水も、無いと命に関わるものなのに、普段はほとんど意識することもないのではないか。 ぜいたくな話とは思うけど、ぼくにとってそういうもののひとつに「柿」がある。 そう、学名を"kaki"という、日本の里山原風景に溶け込んだあの赤い果実のことだ。 ぼくのふるさとである和歌山は、なにを隠そう柿の生産量は日本一。 和歌山とい………………~続きを読む~
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第19膳 給食メニューは何が好き?……って、ええ!そんなの出たんですか

 お家の近くにスーパー銭湯があって、時おり伊緒さんと浸かりにいくのを楽しみにしている。 どういうわけか銭湯では風呂上がりに必ず牛乳を飲みたくなって、それがひそかな喜びともなっている。 そこの牛乳は昔ながらの瓶詰めで、プラスチックのキャップではなくってレトロな紙製のフタが付いているのだ。 こんなものがよくまだあったな、と嬉しくなって、ついつい童心にかえってしまう。 牛乳瓶の紙のフタは、千枚通しみたいな針を突き刺して取………………~続きを読む~
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第20膳 やっぱり〆にはお米でしょう!タラコのせたり、たまごかけたり

 この世でいちばんおいしいものは何か? 人類史はじまって以来のそんな問いに、あまたの聖人賢者たちが心を砕いてまいりました。 その答えにはさまざまなものがありますが、わたしが大好きなエピソードを二つご紹介したいと思います。 一つ目はかの"東照大権現"、徳川家康にまつわるお話です。 あるとき家康さんは居並ぶ家臣と戦談義をしていましたが、唐突に「この世でいちばんうまいものは何だと思う?」という問いを発します。 剛勇無双の………………~続きを読む~
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【WEB小説】『伊緒さんのお嫁ご飯』 ―目次―

貴女がいるから、まっすぐ家に帰ります――。 伊緒さんが作ってくれる、おいしい「お嫁ご飯」が楽しみな僕。子供のころから憧れていた小さな幸せに、ほっと心が癒されていきます。 ちょっぴり歴女な伊緒さんの、とっても温かい料理のお話。 「第1回ライト文芸大賞」大賞候補作品。「エブリスタ」「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です! 目次 ………………~続きを読む~
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第一椀 伊緒さんのカレーはどういうわけか、初日から二日寝かせた味がする

 今日の晩ごはんはなんだろうなあ、と、楽しみにしながら帰るなんて子どもの頃には考えられないことだった。  両親はバリバリの共働きだったし、低学年からずっと塾通いだったので、家族で食卓を囲んだ記憶はほとんどない。  夕食はコンビニ弁当か、母が作り置きしてくれた簡単なおかずとおにぎりを、塾で食べるのが普通だった。  自分の周りの子どもたちは皆同じような感じだったので、特段それが変だと思ったことはなかった。  でも、塾へ………………~続きを読む~
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第二椀 「君の味噌汁を毎日飲みたい」と言われても、実はすごくたいへんなのでは

 伊緒さんにどういう感じでプロポーズしたのか、実はほとんど覚えていない。 その前後の記憶があいまいな理由はまあ、おいおいお話しするとして、何やらしきりに「味噌汁」のことを言っていたのだという。 「君の味噌汁を毎日飲みたい」 というプロポーズの文句は、もはや無形文化財ともいえるほど伝統的かつレトロなもので、この封建的なセリフが僕は大嫌いだった。 考えてもみれば、これは家庭に入った女性が食事を支度して、しかも味噌汁とい………………~続きを読む~
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第三椀 伊緒さんのハンバーグは子どもはおろか、大人だって小躍りして喜ぶのだ

 およそ「子どもが喜ぶ」といわれるメニューには洋食が多い。 カレー、スパゲティ、オムライス、エビフライ等々、どれも食べやすくて味付けもきっぱりと分かりやすく、何よりそこはかとない華やぎのようなものがある。 子どもの頃の僕は、こういったメニューに喜んでみせることを、とても恥ずかしいことだと思っていた。 子どもだからエビフライが好きだろう、オムライスがいいんじゃないか、とたまに会う親戚の大人たちが気遣ってくれたりするの………………~続きを読む~
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第四椀 「副菜」と呼ばれる小鉢には、伊緒さんの愛があふれていました

「これ、ものすごくおいしいです」 僕はそう言って、しげしげと箸でつまんだ緑の野菜を観察した。 「そう、よかった」 伊緒さんがいつものとおり、テーブルの向かいでにっこり笑う。 ほうれん草よりもうちょっと無骨で、なんとなくとっつきにくい様子の葉物野菜。 栄養は満点だが、やや人付き合いが苦手で、そうやすやすとは他の料理に参画してくれない。 比較して申し訳ないけど、たとえばほうれん草だったらおひたしでもバター炒めでも、お味………………~続きを読む~
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第五椀 「レバーの唐揚げ」。敬遠していたレバーが、大好物になりました

 食べものの好き嫌い、というのは少ない方だと思うのだけど、レバーはどうにも得意ではなかった。 肉ともホルモンともつかない不思議な食感で、噛めば噛むほどもっちゃりと口中の水分を奪われる感じが好きになれなかった。 しかも、調理がまずいと生臭さがツンと鼻に抜けて、もう食欲をなくしてしまう。 僕だけじゃなくて、レバーが苦手だという人は結構多いんじゃないかと思う。 でも・・・。 「わあ、今夜は鶏の唐揚げですか!」 目の………………~続きを読む~