Warning: Undefined variable $author in /home/suzushiro15/suzushiroblog.com/public_html/wp-content/themes/cocoon-master/functions.php on line 131
suzushiro15

小説

箸休め 「〆のお茶漬け」、僕だってたまには付き合いで遅くなることもあるのです

 僕は小さな小さな出版社に勤めている。 社史とか自分史とかを主に扱う会社で、かっこよく言えば「書籍編集者」という職業だ。 でも零細なので、実際には取材から簡単なライティング、編集に校正、印刷手配まで、つまり何でも自分でやらなければならない。 と、言いつつも僕はこの仕事をとても気に入っていて、なんだかんだで楽しくやっていけているのは幸せなことだと思う。 職業柄、いろいろな人と関わることになるので、お酒の席へのお誘いも………………~続きを読む~
小説

第六椀 「小鍋立て」はワケあり男女の、大人のおままごとだそうな

 しっかりご飯を食べるにはちょっと空腹度が足りなくて、でも食事はしたいなあ、というややこしい腹具合のときがある。 お休みの日なんかに伊緒さんと一日過ごしていると、おなかの空き方もだいたい似てくるようで今日はふたりともまさしくそんな気分だった。 「一度やってみたかったことがあるんだけど、付き合ってくれる?」 腹案があるらしい伊緒さんが、楽しげにエプロンを身に付けてキッチンに立った。 そんな彼女の姿を見ているだけで僕は………………~続きを読む~
小説

第七椀 「とろふわ朝食たまご」。シンプルな料理ほどむずかしいのは本当です

 伊緒さんも僕もお米が大好きなので、ふだんの主食はほとんどご飯だ。 でも、ふたりで寝坊できるお休みの朝なんかは、無性にパンが食べたくなってしまう。 トーストの焼き加減は、伊緒さんはほんのりと。僕はこんがりと。 トースターの前でじぃーっと目を光らせて、ベストなタイミングで取り出すのは僕の役目。 あとはその時の気分でコーヒーか紅茶を選ぶのだけど、伊緒さんはどちらかというと紅茶党で、僕はコーヒー党だ。 今朝は珍しく伊緒さ………………~続きを読む~
小説

第八椀 「ごちそうチキンカツ」。給料日前でも、伊緒さんの手にかかればこの通り

 僕の安月給でも何とか生活ができて、おいしいご飯を食べられるのは、ひとえに伊緒さんが上手にやりくりしてくれているおかげだ。 でもさすがに給料日前ともなると、懐具合がさみしくなってあと何日、あと何日と指折り数えて支給日を心待ちにしてしまう。 一人暮らしをしていた頃はその度合いがもっと顕著で、今の会社に入って一年目の、最初の給料日直前には冗談じゃなく本当に野草を摘みに行った。『食べられる野草・シティ編』という、ものすご………………~続きを読む~
小説

第九椀 直球の「肉じゃが」。男はなぜこうも、この料理に弱いのか

 男はなぜ、「肉じゃが」に弱いのか? 天保年間に始まったという「彼女に作ってほしい手料理ランキング」では、爾来150年の長きにわたって不動の王座に君臨し続けている暴君だ。 そのあまりのベタぶりに、世の女性はうっかり「得意料理は肉じゃがです」などと口にするのもはばかるという。 肉じゃがそのものは決して難しい料理ではない。 基本組成はカレーとほぼ同じであり、カレールーがないことに気づけば最初からこうするつもりだったんだ………………~続きを読む~
小説

第十椀 「ミートボールスパゲティ」。伊緒さんはあのアニメが大好きなんです

 伊緒さんは実はアニメが大好きで、特に不思議な森の精や浮遊する古代都市なんかが出てくる、某監督の作品は子どもの頃からのファンなのだという。 休日の前夜なんかにはよく、お菓子をつまみながらふたりでノートパソコンの画面を前に、そんなアニメ映画を観たりする。 その作品群では、ことに食事のシーンが印象的で、何回観ても思わず「おいしそう!」とふたり同時に叫んでしまうほどだ。 伊緒さんが特にお気に入りなのは、ひょうきんな紳士と………………~続きを読む~
小説

箸休め お出かけしたら、伊緒さんだってたまにはジャンクフードも食べます

 伊緒さんと知り合った頃、 「なんておいしそうにご飯を食べるひとなんだろう」 と思ったものだった。 当時はもちろん、たいしてお金があるわけでもなく(今もそうだけど) 、デートの食事といってもファミレスとかファーストフードとか、頑張ったところでパスタのチェーン店などにたいそうお世話になっていた。 でも、伊緒さんと一緒にとる食事は、何であろうと本当においしかった。 例えばジャンクフードなんかは、おいしいとかどうとかいう………………~続きを読む~
小説

第十一椀 筑前煮からの「リメイク酢豚」。2度おいしくて余りも出ません

「ごめんね、ちょっと作りすぎちゃったみたい」 伊緒さんがぺろっと舌を出しつつ、申し訳なさそうにそう言った。 「そんなことないです!すごくおいしいですよ」 慌ててぼくが否定したけど、目の前のお皿には珍しく料理が残っている。 たいがいは食べきってしまって、もっと食べていたいなー、と思うような余韻にひたることが多いので、これはとてもレアなケースだ。 「晃くんくらいの年齢の男の子が、こういうのをモリモリ食べるわけないわよね………………~続きを読む~
小説

第十二椀 「ブリの刺身→ヅケ→照り焼き」。お楽しみの三段活用

 数ある魚の中でもブリが一番好きだ。 西の方で育ったぼくにとって、お正月の魚といえばなんといってもブリだった。 見るからに豪勢な姿の大きな魚は、幼いぼくの心に「ごちそう」としてインプットされたのだ。 普段は忙しくて、めったに揃うことのない家族だったが、お正月だけは特別だった。 漁師町で育った父は平凡なサラリーマンになったが、見事な包丁さばきで魚をおろすという特技を持っていた。 そこで年末には奮発してブリを一本まるま………………~続きを読む~
小説

第十三椀 風邪ひきの「とうふ雑炊」。心も体もぽかぽかです

 すごく久しぶりに風邪をひいてしまった。 仕事にも差し支えるし、しんどいのも嫌だし、なにより伊緒さんにうつしたりしたら大変なので細心の注意を払っていたのに。 金曜の夕方あたりから不気味な悪寒が背中を這い登り、早めに帰宅したものの伊緒さんの顔を見て安心したのか、どっと具合が悪くなった。 咳はないけど頭にぼんわりとモヤがかかったような感じがして、体温計には「38℃」と表示されている。 すごい高熱、というわけではないけれ………………~続きを読む~