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桃にきのこにお味噌の神さま!? 珍しい御祭神や神使で知られる神社10選!

歴史トピック
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「八百万(やおよろず)」という言葉があるように、日本では古くから森羅万象に神性を感じ敬ってきました。
歳経た樹木や大きな岩など、神が宿る依代として大切にされてきたのも周知のとおりですね。

あらゆるものに神様がおられるという観念は列島の基層信仰といっても過言ではありませんが、なかには「そんな神様まで!?」といった驚きに出合うことも。

本記事では、たいへん珍しい御祭神や神使がおわす神社さんを10社まとめてみました!

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桃の神さま! 「賀茂神社(かもじんじゃ)」(徳島県阿波市)

みんな大好きなおいしいフルーツの桃ですが、れっきとした神さまとしてお祀りされています。

正確な創建年代は不明ながら、古くから桃の神さまを主祭神の一柱として奉斎しているのが徳島県阿波市の加茂神社です。

古代中国の信仰や有名な御伽噺の『桃太郎』からもわかるとおり、桃は魔を払う霊力を秘めた仙果でもありました。
『古事記』『日本書紀』にも黄泉から戻るイザナギノミコトが、追手の雷神を退けるために投げつけたのが桃の実でした。

このことから桃は「意富加牟積命(オオカムヅミノミコト)」の神名を授けられたのです。

桃の神さまをお祀りしている神社さんは全国に数社ありますが、近代以前に遡るうえに主祭神としているのはこの賀茂神社のみとされています。

徳島県阿波市|賀茂神社の御祭神は桃!?全国で唯一「意富加牟積命」をお祀りする神社
賀茂(かも)神社は県道12号線沿いにありますが、境内入り口が狭いため車で前を通っても神社の存在に気づかないかも。社号標に「日本一神」とあるように、意富加牟積命という桃の実の神さまを主祭神とするのは全国で賀茂神社だけ。御朱印は神社に隣接する宮司さん宅でいただけます。
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きのこの神さま! 「菌神社(くさびらじんじゃ)」(滋賀県栗東市)

なんともめずらしい、きのこの神さまをお祀りするのが滋賀県栗東市の菌神社です。

「菌(くさびら)」はきのこを表す古語で、狂言にもこの名の曲がありますね。
蛇足ながら曲の内容は巨大キノコの退治に向かった山伏が増殖したキノコに返り討ちにあうという、ダン飯みたいな楽しいお話ですのでぜひ。
ちなみに「菌」と書くのは大蔵流で、和泉流では「茸」を「くさびら」と読ませます。

さっそく話題が逸れましたが、菌神社の創建は舒明天皇9年(637年)と伝わります。
飢饉に苦しむ村の人たちが神さまに祈りを捧げたところ、一夜にしてたくさんのきのこが生えて人々を飢えから救ったことが由来です。

御祭神は「大斗能地神(オオトノジノカミ)」「大斗乃辨神(オオトノべノカミ)」といい、滋賀県草津の「伊砂砂神社(いささじんじゃ)」が兼務しています。

なお、きのこの神さまをお祀りしているのは全国広しといえどこの菌神社だけだそうです。

菌 神社
菌(くさびら)神社 滋賀県栗東市中沢1-11-15 鎮座 (伊砂砂神社が兼務しているお宮です) 舒明天皇九年(637年)に勧請したと伝わる古社。 菌(くさびら)とはキノコの古い表現で、大昔飢饉に 苦しんでいた人々が神さまにお祈りしたところ、 一夜にしてキノコが生え村人を飢えから救ったと 伝えられ、最近では「日本で唯一キ………………~続きを読む~
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タニシの神使さま! 「蜊江神社(つぶえじんじゃ)」(滋賀県守山市)

みなさんはタニシをご存じでしょうか?
文字どおり田んぼや水辺にいる黒く小さな巻貝で、コリコリしてとっても美味しいそうですね。

さて、正確には御祭神ではなく神使なのですが、このタニシを大切にしているのが滋賀県守山市の蜊江神社です。
「蜊(ツブ)」がタニシのことで、江戸時代の水害で社殿まで流されそうになったとき、タニシの付着したお神輿がその眼前で止まったと伝わります。
それ以来、地域の人々はタニシを「御蜊様(おつぶさま)」と呼んで神の使いとして敬うようになったといいます。

ちなみに蜊江神社の御祭神は天孫降臨で知られるニニギノミコトで、神社は社殿と仏堂が並立する神仏習合時代の特徴を残す希少な構成となっています。

蜊江神社(つぶえじんじゃ) - 守山市観光物産協会
蜊江神社では「オツブさん」、つまりタニシ(蜊)を神の使いとして祀っています。 この地は、古くから
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香辛料の神さま! 「波自加彌神社(はじかみじんじゃ)」(石川県金沢市)

こちらも日本唯一、なんと香辛料の神さまをお祀りしているのが金沢市の波自加彌神社です。

「はじかみ」とは「薑」「椒」と書き、生姜・山椒・山葵など辛みのあるものを指します。
現在も焼き魚などに葉生姜の甘酢漬けを添えることがあり、これをはじかみと呼んでいますね。

なお、生姜は弥生時代に渡来してきたと考えられており、平安時代には栽培されていたことが『延喜式』の記述からうかがえます。

波自加彌神社の御祭神はその名も「波自加彌」とおっしゃり、毎年6月15日のはじかみ大祭(しょうが祭り)ではお清めされた生姜湯がお参りの方々に振る舞われます。

日本唯一香辛料の神 波自加彌神社
日本で唯一香辛料の神様をお祀りする波自加彌神社は健康長寿・料理上達にご利益があると言われております。毎年6月15日「しょうがの日」には奇祭「はじかみ大祭」が行なわれます 。
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恋の神さま! 「恋木神社(こいのきじんじゃ)」(福岡県筑後市)

お次はなんと、恋の神さまをお祀りする縁結びの神社さん。
福岡県筑後市の恋木神社です。

太宰府天満宮と並ぶ九州二大天満宮、水田天満宮の末社で御祭神はその名も「恋命(こいのみこと)」と仰います。
鎌倉時代の水田天満宮創建当初から鎮座しており、都に想いを馳せる菅原道真公の御魂をお慰めするために祀られたといい、恋木神社の「木」は東のことを意味すると説明されています。

境内各所には御神紋のハート型意匠が散りばめられ、おみくじもハートの形になるよう結ぶのだとか。
すてきですね!

全国一社【恋木神社】へようこそ!恋の神様
恋木神社は日本で一社のみ。お守りのご授与や恋愛成就、良縁成就、結婚、夫婦円満などのご参拝をお待ちしております。
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お漬物の神さま! 「萱津神社(かやづじんじゃ)」(愛知県あま市)

動植物や縁結びのご神威は充分イメージできるかと思いますが、調理された食べものを司る神もおわします。
こちらはお漬物の神さま、愛知県あま市の萱津神社です。

御祭神は農耕神の「鹿屋野比売神(かやぬひめのかみ)」ですが、古代には海岸線が近かった当地では供物として藻塩も捧げていたといいます。
神饌のウリやナス、タデなどは時と共に朽ちていきますが、これらの野菜と藻塩を瓶で一緒に保存したところ見事な塩漬けができたというのが漬物の神たる由縁と伝わっています。

たしかに野菜の姿や瑞々しさをとどめる塩の力は、まるで時を止めるかのような神なる御業と思えるものですね。

また、日本武尊が東へと向かう軍旅の途上で萱津神社に立ち寄った際、村人たちがこの漬物を献上したといいます。その神威に感じ入った尊がこれを「神物(こうのもの)」と称えたことから、漬物を「香の物」と呼ぶようになったと伝承されています。
香の物の語源にはさまざまな説がありますが、実にすてきな物語の一つですね。

毎年8月21日に香乃物祭(漬物祭)が執り行われています。

萱津神社 | あま市観光協会
国内唯一の「漬物の神」が祀られる神社
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お味噌の神さま! 「本村神社(もとむらじんじゃ)」(熊本県熊本市)

お漬物の次は調味料のご神威、お味噌の神さまをお祀りするのが熊本市の本村神社です。

創建は社伝によると和銅6年(713年)、元明天皇の時代。
初代肥後国司・道君首名(みちのきみのおびとな)が、当時流行した悪疫の終息を祈願して薬の神である「御祖天神(みそてんじん)」をお祀りしたことがはじまりといいます。

そしてこれより約28年後、肥後国分寺で僧や信徒の食事に用いられていた大量の味噌が腐敗するという事故が起こりました。
困り果てた僧たちが御祖天神に祈りを捧げたところ、「境内の小笹を味噌桶の中に立てよ」との神託を受け、その通りにするとはたして味噌は美味なるものに変わっていたというのです。

以来、御祖天神は「味噌天神」としてお味噌の神さまとしても崇敬されるようになりました。
なお、「ミソ」を天神に捧げる「御衣(みそ)」のこととする学説もあるようです。

毎年10月25日の例大祭では、お味噌の授与や味噌汁の振る舞いなどが行われています。

味噌天神(本村神社)
熊本市の公式観光サイト。熊本城や水前寺成趣園などの観光地をはじめ、グルメ、イベント、特産品など、心にグッと来る熊本の魅力を紹介します。
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お饅頭の神さま! 「林神社(りんじんじゃ)」(奈良県奈良市)

食べもののご神威シリーズ、次はお饅頭の神さまをお祀りする奈良市の林神社(漢國神社(かんごうじんじゃ)内)です。

神道では実在の人物を神さまとしてお祀りすることが珍しくありませんが、こちらは南北朝時代の定和年(1349年/北朝年号)に中国から来朝した「林浄因(りんじょういん)」という方を御祭神としています。

浄因公は漢國神社の社頭に住まわれ、日本で初めてのお饅頭をつくって足利将軍家や宮中に献上しました。
このことからお饅頭の神さま・お菓子の神さまとして崇敬を集めるようになったといいます。

毎年4月19日には饅頭まつりが執り行われ、全国からたくさんのお饅頭がお供えされるそうです。

漢國神社
漢國(かんごう)神社は、推古天皇の元年(593)、 勅命により大神君白堤(おおみわのきみしらつつみ)が 大物主命(おおものぬしのみこと)を、その後、養老元年(717)には藤原不比等公が大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)を合祀。 古くは春日率川坂岡社(かすがいさがわさかおかしゃ)と称す。
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料理の神さま! 「高家神社(たかべじんじゃ)」(千葉県南房総市)

食べものに関わる神社さんをご紹介してきましたが、こちらは料理そのものを司る神さまをお祀りする、千葉県南房総市の高家神社です。

御祭神は「磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)」といい、神話にみる料理の祖と位置付けられています。
景行天皇が日本武尊の東国平定を偲んで安房・浮島の宮に行幸した際、磐鹿六雁命が弓の弦で釣り上げたカツオと浜で拾ったハマグリを膾(なます)にして献上したと伝えられます。

これを称えられて調理を担当する「膳大伴部(かしわでのおおともべ)」を拝命したことが、料理の祖神としての起源譚です。

なお、律令制下で天皇の食事を司る「内膳司」の長官を代々務めた高橋氏は、磐鹿六雁命の末裔と伝えられています。
さらに高家神社の「べ」は「瓶(へ/かめ)」に通じることから、大いなる瓶の意味から宮中の醤院(ひしおのつかさ)では瓶で醸造・発酵させる醤油・味噌・漬物の神「高倍さま」としてもお祀りされてきました。

また、高家神社では平安時代初期から伝わる、食材に直接手を触れず包丁と箸で鯉や真鯛などをさばく「包丁式」の奉納も執り行われています。

高家神社 =日本で唯一 料理の神さま=
高家神社は全国でも珍しい料理の神様をお祀りする神社です。毎年、5月17日、10月17日(旧神嘗祭かんなめさい)と11月23日(旧新嘗祭にいなめさい)に高家神社境内で庖丁式の奉納が執り行われています。
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紙の神さま! 「岡太神社(おかもとじんじゃ)」(福井県越前市)

最後は「紙の神さま」をお祀りする、福井県越前市の岡太神社をご紹介します。

いまから1,500年ほども前、岡本川の上流に一人の美しい女性が現れて里人に紙漉きの技を伝えたといいます。
この姫神を「川上御前」と呼んでお祀りしたのが岡太神社で、全国一の和紙産地として名高い越前において「紙祖神」として崇敬されています。

なお、明治時代初期から紙幣を管轄していたのは大蔵省ですが、国産紙幣用紙の製造のため明治8年(1875年)に紙幣局抄紙部に招かれたのが越前の紙漉き職人たちでした。

紙幣局はほどなく印刷局と改称されますが越前との交流は続き、大正12年(1923年)に抄紙部の希望により川上御前の分霊を部内の飛鳥稲荷と合祀され、紙業界の神さまとして広く崇敬されるようになりました。

ちなみ岡太神社および共に鎮座する大瀧神社の社殿は4層の檜皮葺という非常に珍しい構造で、日本一複雑な屋根とも称されています。

日本で唯一、紙の神様のいる 『岡太神社・大瀧神社』 - 美めぐりふくい
紙の神様への信仰が残る、紙づくりの聖地。 福井県越前市の今立地区は、古くから紙漉きがさかんで、全国に数ある和紙

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まとめ

今回は珍しい御祭神・神使のおわす神社さんを10社のみご紹介しましたが、全国にはまだまだ不思議な神さまがおられます。
さまざまな神社の在り方は森羅万象に畏敬の念を抱いてきたことの証ともいえ、敬虔な気持ちを新たにさせてくれる場所でもありますね。

帯刀コロク・記

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