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第9膳 今日のお寿司は回りません!東と西でこんなに違いがあるのです

「……はい。承知しました。ええ、それでは納品までお待ちください」 自信たっぷりに言い放ったものの、わたしは電話を切った瞬間、大きくため息をついてしまいました。 さて、困ったことになったぞ。 なにが困ったことになったかというと、わたしがお家で受けているライティングのお仕事のお題についてです。 大好きな歴史関係のトピックを中心に書いていますが、もちろんすべてが得意分野というわけではありません。 でも、わたしのようなフリ………………~続きを読む~
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第10膳 夏の涼味のわらび餅!石焼き芋とよく似たリズムで売りにきますよ

 先日伊緒さんが保護した茶トラの子ニャーは、「コロ」と名付けられた。 これはぼくが子どもの頃にこのお家にいた、同じく茶トラネコの名前を襲名した形になる。 つまりは「二代目・コロ」なのだけど、この子ニャーがまたとんでもなくやんちゃだった。 「にー!」と鳴いてはだだっ、と走っていってカーテンのひらひらにかじりつく。 「ににー!」と鳴いてはがしがしがし、と網戸のいちばん上までクライミングする。 そしてコロが何かいたずらす………………~続きを読む~
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第11膳 おばあちゃんのレシピ帳。少女時代の伊緒さんと、お料理の先生

 ねえ、おばあちゃん。  塩少々ってどんくらいだべか。  こんなぺっこだら、味しないしょー?     幼いころのわたしは"塩少々"のことを文字通り、ほんのすこしだけという意味だと信じこんでいました。 どのお料理のレシピを見聞きしても、かならずどこかに"塩少々"とあるのがふしぎでたまらず、それでは味がしないはずだとおもったのです。 「"少々"ってのは、"ちょうどいい量"って意味だよう」 祖母はいつも………………~続きを読む~
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第12膳 お餅のかたちは丸?四角?餅好きはお正月以外も食べたいものです

 伊緒さんの大好きなもののひとつに、「お餅」がある。 そう、お正月に集中的に食される、白くてもっちりしたあれだ。 ふだんはそんなにたくさん食べられるほうではないのに、お餅だけは別腹が発動するらしい。 あの小さなからだのどこにそんなに入るんだろうと、いつも不思議で仕方ない。 お餅の形が東西で異なるのは有名なお話で、やっぱり関ヶ原のあたりがだいたいの境界線だという。 関西に越してきて伊緒さんが喜んだことのひとつに、"お………………~続きを読む~
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第13膳 さあさあ、みんなでジンギスカン!里帰りと伊緒さんのお母さん

 ついひと昔前まで、北海道へ旅するにはフェリーが最も安い足だった。 いまでこそ格安の航空会社がさかんに利用されるようになったけれど、旅人にとって船は長きに渡り移動手段の王だったのだ。 伊緒さんと知り合った頃はLCCが登場する直前で、まだフェリー華やかなりし時代の名残りを留めていた。 たとえば関西からなら京都の舞鶴港から小樽まで。 関東からなら茨城の大洗港から苫小牧まで。 それぞれおよそ20時間の船旅だ。 そう説明す………………~続きを読む~
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第14膳 伊緒さんのラーメン食べ比べ。札幌vs和歌山のご当地対決です

 道産子がラーメンにうるさいというのは、ご存じのとおりかと思います。 どういうわけか北海道はラーメンどころでもあり、観光地には必ずといっていいほど「なんとか横丁」とか「かんとか道場」みたいなラーメン屋さんの集中地帯があるのです。 わたしは札幌で生まれ育ちましたので、みそ味のこってりスープに太いちぢれ麺の"サッポロラーメン"になれしたしんできました。 なぜこのようなスタイルができあがったのかについては諸説ありますが、………………~続きを読む~
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第15膳 ”ピッツァ”は”ピザ”のオサレな言い方…ではないんですって?

 伊緒さんにはまるで双子のようにそっくりな、「瑠依さん」という従姉妹がいる。 この人のことを伊緒さんはとても慕っていて、姉妹のように仲良しな様子は見ていてとってもほほえましい。 でも姿かたちはよく似ているものの二人のキャラクターは全然違って、伊緒さんが「明るい天然」とすると瑠依さんは「クールな天然」といえるだろう。 あまり表情を変えることもなく、切れ長の目に縁なしめがねをかけた瑠依さんの風貌は怜悧そのものなのだけど………………~続きを読む~
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第16膳 西のうどんに東のお蕎麦。でも蕎麦ってハードル高くないですか?

 わたしにとって関西の食べ物はめずらしく、またとってもおいしいものばかりでした。 よく東北地方は味付けが濃い目で、関西の料理は薄くて物足りなく感じる、などといわれます。 わたしも当初はそのあっさり加減に少し面くらいましたが、なれてくるにしたがって、単なる薄味というわけではないことがわかるようになってきました。 しっかりとお出汁をひいて旨みを凝縮し、素材そのものの味を引き出す知恵はさすがの歴史を感じさせます。 おいし………………~続きを読む~
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第17膳 まさか自宅で缶詰バーとは!じつは子ニャーも常連さんです

 すごくたくさんの缶詰をもらった。 会社あてに届けられるお中元を社員みんなに分けるというビンゴ大会で、みごとに缶詰だけを大量に引き当ててしまった。 多すぎるので同僚や上司に一部バーターをもちかけたけれど、面白がって誰も応じてくれなかった。 しかし今日び、こんなに保存食をいただくというのもまったくありがたい。 多謝多謝。 袋に分けて、通勤カバンにも詰め込んで、えっちらおっちらお家まで運んだものだが、本来なら一気に持ち………………~続きを読む~
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第18膳 大和名物「柿の葉寿司」!鯖寿司を、柿の葉っぱでくるんでみたよ

 ぜんたい、当たり前のようにそこにあるものには、なかなか有り難みを感じられなくなるものらしい。 空気も水も、無いと命に関わるものなのに、普段はほとんど意識することもないのではないか。 ぜいたくな話とは思うけど、ぼくにとってそういうもののひとつに「柿」がある。 そう、学名を"kaki"という、日本の里山原風景に溶け込んだあの赤い果実のことだ。 ぼくのふるさとである和歌山は、なにを隠そう柿の生産量は日本一。 和歌山とい………………~続きを読む~