伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

広告
WEB小説

【WEB小説】『伊緒さんのお嫁ご飯〜番外・手作らず編〜』 ―目次―

いっしょだと、なんだっておいしいーー。 伊緒さんだって、たまにはインスタントで済ませたり、旅先の名物に舌鼓を打ったりもするのです……。そんな「手作らず」な料理の数々も、今度のご飯の大事なヒント。 いっしょに食べると、なんだっておいしい! 『伊緒さんのお嫁ご飯』からほんの少し未来の、異なる時間軸のお話です。 「エブリスタ」「カクヨム」にても公開中です。 目次 ………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第1膳 ここぞとばかりの「カップ麺」。これまた妙においしかったり

 それはもう、ものすごい雨の日でした。 関西にある、かつて夫が育ったお家に引っ越してきた初日のことです。 荷物を解くのはまあ、おっぽらかしておいて、さっそく近くのスーパーに初買い出しに行くべかと思っていた矢先でした。 一天にわかにかき曇り、逆巻く風がすぐ裏手の山に当たって、不気味な唸り声をあげたのです。 あれよと言う間に空は臨界点を迎え、わたしは生まれて初めて「黒雲」が湧き上がる様子を目にしました。 カッ、と青紫の………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第2膳 夏祭り!夜店の食べ物って何でこんなノスタルジックなのでしょう

 ぼくの育った地元には大きな川が流れていて、その川原で毎年お盆の頃に夏祭りが行われる。 近隣では有数の規模のお祭りで、盆踊りとか灯籠流しとか打ち上げ花火とか、とにかくフルコースの行事だった。 そしてものすごいのが夜店の屋台で、河川敷いっぱいはおろか、沿道にまでわんさかはみ出してひしめくのだ。 普段は夜になると真っ暗な界隈なのだけど、この日ばかりは遠くからでもその灯りが認められて、幻想世界の夜市が開かれているかのよう………………~続きを読む~
広告
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第3膳 旅行の朝のバイキング。さあ、狩りの時間がやってきました

 お小づかいを貯めてときおり旅行にいくのは、わたしたち夫婦の大きな楽しみのひとつです。 でも、あんまり有名な観光地とかテーマパークとかには行きません。 知る人ぞ知る古代遺跡とか、整備されていない山城の跡とか、万葉歌人が旅した道とか、かなりマニアックな場所を訪ねて歩くのがわたしたちのお気に入りです。「ええ!あったらトコなあーんもねえでやあ!やいやい、モノ好きな姉っこだでなあ!」 的なことをよく言われるのですが、それこ………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第4膳 土用の丑がやってきた!うなぎを食べねばなりますまいよ

 暑い。 それはもう、暑い。 この暑さをなんとかかんとか乗り切ろうと、気力をふりしぼったのは古代の人も同じだったのだろう。 万葉集にこんな歌が記されている。  石麻呂に  我もの申す 夏やせに  よしといふものぞ  むなぎ捕りめせ  「むなぎ」とはうなぎのことで、胸のあたりが黃色いことから「胸黃」が語源ともされている。 やせっぽちだった「石麻呂」という人物を心配して、夏場にスタミナをつ………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第5膳 なんか駄菓子をたくさんもらったぞ!「地蔵盆」?なにそれ、ねえ

 どういうわけか、駄菓子が詰め合わせになった袋を抱きかかえて伊緒さんが帰ってきた。 きょとんと不思議そうな顔をして、あたまの上にたくさんのハテナが浮かんでいる。 なんで突然こんなにお菓子をもらったのだろう、わたしいったい何してるんだろう。 そんなワンダーに満ちた状態で、ことのあらましを語り始めた。 「お家の下の坂をおりきった辻に、お地蔵さまの祠があるでしょう。なんだかそこがすごく賑やかで、なんだべなんだべって覗いて………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第6膳 たこ焼きとプラネタリウム。大阪デートの定番おやつです

 ぼくが育った関西地方の田舎街に引っ越してきてから、伊緒さんとちょくちょく大阪に遊びに出かけるようになった。 札幌育ちの彼女にとって関西の街並みはいまだに珍しいらしく、大阪なんてそれこそ「異郷」を通り越して「魔境」みたいなものかもしれない。 とはいえぼくのイメージでは、北海道民は大阪に好意的な人が多いような気がする。 関西弁圏の方が道内に旅行することがあれば、旅先ではきっぱり訛ってみてほしい。 きっと、 「おおっ!………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第7膳 ねこまんまは人間用でお願いします!子ニャーが家にやってきた

 最近伊緒さんの様子がなんかおかしい。 一日に何度か、ちょこちょことお家の外に出ていくのだけど、その出方がすごくあやしい。 まずはキョロキョロと辺りの様子をうかがい、危険がないかとか敵がいないかとかをよおく確認する。 そして廊下の角から角へと「ささささささっ」と忍び足で移動する。 いや、しているつもりなのだけど、実際には「てけてけてけてけ」とヘンな音がするのでいやでもぼくの耳に届いてくる。 伊緒さんはそんなに運動が………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第8膳 美女と天ぷらとオトナの男。でもちょっと勘違いしてたかも

 これでもぼくなりの「オトナの男像」みたいなものがあって、いまだにちくちくとその影響を受け続けている。 あれはいくつのときだったか、子どもの頃にテレビで観たグルメ番組がその原風景のひとつなのだ。 いまとなってはもう誰だか分からないけど、勝新太郎と谷崎潤一郎を足して2で割ったような、「ただしい旦那様」がさまざまな料理屋さんを訪れる番組だった。 その恰幅のよさとどこでも平等に尊大な立ち居振る舞いは、思わず「ははあ」と思………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第9膳 今日のお寿司は回りません!東と西でこんなに違いがあるのです

「……はい。承知しました。ええ、それでは納品までお待ちください」 自信たっぷりに言い放ったものの、わたしは電話を切った瞬間、大きくため息をついてしまいました。 さて、困ったことになったぞ。 なにが困ったことになったかというと、わたしがお家で受けているライティングのお仕事のお題についてです。 大好きな歴史関係のトピックを中心に書いていますが、もちろんすべてが得意分野というわけではありません。 でも、わたしのようなフリ………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第10膳 夏の涼味のわらび餅!石焼き芋とよく似たリズムで売りにきますよ

 先日伊緒さんが保護した茶トラの子ニャーは、「コロ」と名付けられた。 これはぼくが子どもの頃にこのお家にいた、同じく茶トラネコの名前を襲名した形になる。 つまりは「二代目・コロ」なのだけど、この子ニャーがまたとんでもなくやんちゃだった。 「にー!」と鳴いてはだだっ、と走っていってカーテンのひらひらにかじりつく。 「ににー!」と鳴いてはがしがしがし、と網戸のいちばん上までクライミングする。 そしてコロが何かいたずらす………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第11膳 おばあちゃんのレシピ帳。少女時代の伊緒さんと、お料理の先生

 ねえ、おばあちゃん。  塩少々ってどんくらいだべか。  こんなぺっこだら、味しないしょー?     幼いころのわたしは"塩少々"のことを文字通り、ほんのすこしだけという意味だと信じこんでいました。 どのお料理のレシピを見聞きしても、かならずどこかに"塩少々"とあるのがふしぎでたまらず、それでは味がしないはずだとおもったのです。 「"少々"ってのは、"ちょうどいい量"って意味だよう」 祖母はいつも………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第12膳 お餅のかたちは丸?四角?餅好きはお正月以外も食べたいものです

 伊緒さんの大好きなもののひとつに、「お餅」がある。 そう、お正月に集中的に食される、白くてもっちりしたあれだ。 ふだんはそんなにたくさん食べられるほうではないのに、お餅だけは別腹が発動するらしい。 あの小さなからだのどこにそんなに入るんだろうと、いつも不思議で仕方ない。 お餅の形が東西で異なるのは有名なお話で、やっぱり関ヶ原のあたりがだいたいの境界線だという。 関西に越してきて伊緒さんが喜んだことのひとつに、"お………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第13膳 さあさあ、みんなでジンギスカン!里帰りと伊緒さんのお母さん

 ついひと昔前まで、北海道へ旅するにはフェリーが最も安い足だった。 いまでこそ格安の航空会社がさかんに利用されるようになったけれど、旅人にとって船は長きに渡り移動手段の王だったのだ。 伊緒さんと知り合った頃はLCCが登場する直前で、まだフェリー華やかなりし時代の名残りを留めていた。 たとえば関西からなら京都の舞鶴港から小樽まで。 関東からなら茨城の大洗港から苫小牧まで。 それぞれおよそ20時間の船旅だ。 そう説明す………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第14膳 伊緒さんのラーメン食べ比べ。札幌vs和歌山のご当地対決です

 道産子がラーメンにうるさいというのは、ご存じのとおりかと思います。 どういうわけか北海道はラーメンどころでもあり、観光地には必ずといっていいほど「なんとか横丁」とか「かんとか道場」みたいなラーメン屋さんの集中地帯があるのです。 わたしは札幌で生まれ育ちましたので、みそ味のこってりスープに太いちぢれ麺の"サッポロラーメン"になれしたしんできました。 なぜこのようなスタイルができあがったのかについては諸説ありますが、………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第15膳 ”ピッツァ”は”ピザ”のオサレな言い方…ではないんですって?

 伊緒さんにはまるで双子のようにそっくりな、「瑠依さん」という従姉妹がいる。 この人のことを伊緒さんはとても慕っていて、姉妹のように仲良しな様子は見ていてとってもほほえましい。 でも姿かたちはよく似ているものの二人のキャラクターは全然違って、伊緒さんが「明るい天然」とすると瑠依さんは「クールな天然」といえるだろう。 あまり表情を変えることもなく、切れ長の目に縁なしめがねをかけた瑠依さんの風貌は怜悧そのものなのだけど………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第16膳 西のうどんに東のお蕎麦。でも蕎麦ってハードル高くないですか?

 わたしにとって関西の食べ物はめずらしく、またとってもおいしいものばかりでした。 よく東北地方は味付けが濃い目で、関西の料理は薄くて物足りなく感じる、などといわれます。 わたしも当初はそのあっさり加減に少し面くらいましたが、なれてくるにしたがって、単なる薄味というわけではないことがわかるようになってきました。 しっかりとお出汁をひいて旨みを凝縮し、素材そのものの味を引き出す知恵はさすがの歴史を感じさせます。 おいし………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第17膳 まさか自宅で缶詰バーとは!じつは子ニャーも常連さんです

 すごくたくさんの缶詰をもらった。 会社あてに届けられるお中元を社員みんなに分けるというビンゴ大会で、みごとに缶詰だけを大量に引き当ててしまった。 多すぎるので同僚や上司に一部バーターをもちかけたけれど、面白がって誰も応じてくれなかった。 しかし今日び、こんなに保存食をいただくというのもまったくありがたい。 多謝多謝。 袋に分けて、通勤カバンにも詰め込んで、えっちらおっちらお家まで運んだものだが、本来なら一気に持ち………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第18膳 大和名物「柿の葉寿司」!鯖寿司を、柿の葉っぱでくるんでみたよ

 ぜんたい、当たり前のようにそこにあるものには、なかなか有り難みを感じられなくなるものらしい。 空気も水も、無いと命に関わるものなのに、普段はほとんど意識することもないのではないか。 ぜいたくな話とは思うけど、ぼくにとってそういうもののひとつに「柿」がある。 そう、学名を"kaki"という、日本の里山原風景に溶け込んだあの赤い果実のことだ。 ぼくのふるさとである和歌山は、なにを隠そう柿の生産量は日本一。 和歌山とい………………~続きを読む~
伊緒さんのお嫁ご飯~番外・手作らず編~

第19膳 給食メニューは何が好き?……って、ええ!そんなの出たんですか

 お家の近くにスーパー銭湯があって、時おり伊緒さんと浸かりにいくのを楽しみにしている。 どういうわけか銭湯では風呂上がりに必ず牛乳を飲みたくなって、それがひそかな喜びともなっている。 そこの牛乳は昔ながらの瓶詰めで、プラスチックのキャップではなくってレトロな紙製のフタが付いているのだ。 こんなものがよくまだあったな、と嬉しくなって、ついつい童心にかえってしまう。 牛乳瓶の紙のフタは、千枚通しみたいな針を突き刺して取………………~続きを読む~
広告