フナダマ

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フナダマ

【WEB小説】『フナダマ』

 船内の小さな神棚に塩と洗米を供え、ゴロージは恭しく拍手を打った。 出港前に船のすべてを検め、最後に神棚に礼拝するのは、ゴロージが船頭になってから欠かさない習慣だった。 かつて、船を新造するとその帆柱の根元に古銭や近しい女の髪などを納め、船の魂の拠り所としたという。 「フナダマ」と呼ばれるそれは、船と船乗りたちを守る霊力をもつと信じられ、時代が変わったいまもゴロージは頑なにその伝統を守っていた。   こうして礼拝を………………~続きを読む~
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