毎秋の恒例、「正倉院展」
奈良・正倉院。
東大寺の倉庫として、いまから1350年ほど前に建てられたと考えられている校倉造りの建物です。
天平時代を中心とした工芸品や文書などが大量に伝えられ、建物本体も国宝に指定されています。
そんな正倉院に納められていた宝物を一般公開する「正倉院展」は、2019年度で第71回を数えます。
今回は令和の新元号初、そして東京国立博物館でも38年ぶりの特別展開催ということもあり、大盛況となりました。
毎年の楽しみにしている正倉院展を観に、奈良国立博物館を訪れました。
秋の奈良公園の様子と様子と合わせてレポートします。
近鉄奈良駅から、徒歩10分ほど
奈良国立博物館へは、近鉄奈良駅から徒歩で向かうのが一番のお気に入りです。
ゆっくり歩いてもおよそ10分ほど。
緩やかな上り坂の右手には、広大な公園敷地や興福寺が見え、シカさんたちが出迎えてくれます。

近代的な外観

在野で民衆救済やインフラ整備に尽力、日本初の大僧正になった方。
奈良に来るとまずは「なむなむ」と手を合わせます

早朝でしたが既に大勢の人。海外の方も目立ちました

整備計画で再建された中金堂が見えます

神様のお使いなので大切にされています

収益はシカさんの保護にも充てられます。
見えるところで持っているとシカさんに囲まれます。
ニンゲンは食べちゃだめです



だいたいシカさんに足止めをくらうのでなかなか博物館にたどり着けません


公園の芝生を通り抜けていくこともできます

正倉院展は朝一番でも長蛇の列でした
シカさんをかまいながら、ようやく国立博物館の近くに。
正倉院展は会期が20日程度と短く、全国または世界各地から人が訪れるためたいへんな賑わいです。
夕方以降が比較的空いているといわれていますが、人混みは避けられないと考えた方がいいかもしれませんね。


これはチケットを持っている人の列

館の入り口付近ではさらに三重の折り返し列に

T先生、ありがとうございました!

でもこの日は30分待ちくらいでした

ちょうど退屈してきたあたりで喜んで読みます

秋晴れでも雨でも風情のある景観

あとちょっと、という行列で期待が高まります

行ってきます!
館内の展示はもちろん写真撮影できないので残念ですが、今回は特に聖武天皇遺愛の袈裟と「絁(あしぎぬ)」という絹織物が心に残りました。
聖武天皇の袈裟は、一見するとまるで迷彩柄のような継ぎはぎの不思議なデザイン。
実はこれ、初期の釈迦教団が身に着けていた「糞掃衣(ふんぞうえ)」という僧衣を模したものだそう。
糞掃衣とはボロきれを継ぎ合わせて作ったものであり、聖武天皇の袈裟は素材は上質ながら、初期仏教の教えに対する深いリスペクトを感じさせます。
絁(あしぎぬ)は遠江国(現在の静岡県西部あたり)から、税のひとつ「調」として納められたものです。
辞書を引くと”太い糸で織られた粗目の絹織物"とあり、『延喜式』でも比較的低位の者への給与として頻出するイメージがあったので、少しラフな雰囲気のものを想像していました。
が、その繊細で緩みのない織りは惚れ惚れするような気品があります。
後で知ったところによると、正倉院に保管された絁は通常の絹と製作上の精度がほとんど変わらないとのこと。
文献上でしか知らなかったものを実見できて、感動もひとしおでした。
休憩で石州流のお点前を
正倉院展でひそかに楽しみにしているのが、一階庭側で振る舞われるお茶席です。
四代・家綱の時代から江戸幕府の茶道指南役となった、「石州流」という流派のお点前でした。
勇壮な武家点前で、「馬上杯の武者点」という解説がありました。
女性も袴姿でお点前をすることがあり、とても珍しいスタイルだそう。
かっこいいですね。


裏千家のように泡立てるタイプかと思いました

紙ごと下から手で持って、そのままかぶりつくのは正式な作法とのこと





野趣が素敵
博物館や寺院群を含む、広大な奈良公園
正倉院展が行われる奈良国立博物館は、たくさんのシカさんで有名な奈良公園内に位置しています。
この奈良公園というのはたいへんに広く、南北約2km・東西約4kmという範囲で東大寺や春日大社、興福寺などもその内に含まれています。
ただ歩くだけでも歴史の上に遊んでいるようなもので、好きな人にはたまらないスポットばかりです。
ただ、かわいいシカさんたちは位置づけとしては「野生動物」にあたり、みだりに食べ物を与えたり傷つけたりするのは厳に禁じられています。
かつて鹿島の武神が鹿に乗ってここまでやってきたという伝説に基づいた、神聖な存在でもあります。
ぜひ大切に接してあげてくださいね。
奈良国立博物館には仏像を専門に展示する「仏像館」も併設されています。
一日では足りないくらいの見どころ満載、来年の正倉院展も楽しみです!

三條 すずしろ・記
コメント